2011.06/08 [Wed]
映画『羊たちの沈黙』
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★★★☆☆
若い女性を殺害しその皮を剥ぐという猟奇事件が続発。捜査に行きづまったFBIは、元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターに示唆を受けようとする。訓練生ながらその任に選ばれたクラリスは獄中のレクターに接触する。レクターはクラリスが、自分の過去を話すという条件付きで、事件究明に協力するが……。 (1990年 アメリカ)
「ハンニバル・レクター」シリーズ 第1作。
人生の課題映画をひとつ。敷居の高さを感じていままで鑑賞するのを避けてきたのですが、地上波放送があったのでいよいよその時と思い、録画。
名作と誉れ高いわりには意外と普通な作品で逆に拍子抜けしました。私の趣向が世間の評価とズレているのはいまさら説明するまでもないことですけど、それにしたってこの映画、傑作と言われるほどのものかなぁ。いや、映画史的な問題は置いておくとして。単純に内容だけ見ればそこまでのものでもないです。
本作最大の魅力はハンニバル・レクター博士――カニバル・レクターのキャラクター性でしょう。紛れもない殺人鬼であり、殺した人間の肉を喰らうカニバリズムの犯罪者。確実に異常な精神を持ち併せていながら、その一方で冷静に人を観察し、操ることのできる天才的な精神科医でもある。相反する性質をその心に共存させたレクターのすべてを見透かすような瞳には見る者を惹き込む力があります。素人でもわかるくらいに眼の演技が凄まじい。
そんなレクターと組んでバッファロー・ビル事件の解決に臨むのがFBI訓練生のクラリスです。殺人犯と捜査官というまったく真逆の立場にあり、尚且つ隙あらばクラリスの心に揺さ振りを掛けてくるレクター。この両者が一種師弟的な関係を築き上げながら徐々に真相に迫っていく様が見ものです。
が、問題は中盤以降。レクター脱獄事件が起きるあたりからおかしくなってきます。というのも、この物語の本筋であるバッファロー・ビル事件とレクター博士の脱獄がまるで乖離した話になっているのです。レクターは見張りの警官相手に衝撃的な脱獄を行い、クラリスはクラリスでそんなことを殆ど意に介さず皮剥ぎ魔の捜査に専念する。まるで噛み合っていない。
単にふたつの事件をひとつのお皿に盛っただけでそれが作劇上有効的に機能しているわけでもなく、レクターの脱走騒ぎが物語の本筋(=バッファロー・ビル事件)から外れた完全な蛇足になってしまっている感は拭えません。
1本の物語が途中で二又に別れて、そのまま終わっちゃ駄目なんですよ。いくらなんでも構成というものを無視しすぎている。ハンニバル・レクターという人物の頭の切れる様子、異様さを表現したかったのはわかるけど、もうちょっとどうにかならなかったものだろうか。
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