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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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深水黎一郎『花窗玻璃 シャガールの黙示』

花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)
深水 黎一郎

講談社 2009-09-08
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★★★☆☆
貴君は、あれを良いものだと思いますか?
仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが半年後、また死体が! 二人の共通点は死の直前に、シャガールの花窗玻璃を見ていたこと……。ランスに遊学していた芸術フリークの瞬一郎と、伯父の海埜刑事が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る。


「芸術探偵」シリーズ 第3作。
 今回のテーマはステンドグラス。瞬一郎がランス大聖堂で遭遇した事件を手記として執筆、それを読み進める海埜刑事という作中作二重構造になっている本作。
 著者曰く体裁にこだわり抜いた作品だそうで、ランス大聖堂の壮麗さを伝えるためには普通の文章じゃ用を成さない、手記部分は片仮名は使わずに漢字ルビ表記で異化効果を演出する意図の下に書かれています。確かにその通りです。本来、片仮名表記であるものを漢字にしてみせると、そこに得も言われぬ空気感が生まれる。
 ただし古野まほろでそれを実感した身としてはいささか物足りない。なまじまほろ馴れしているだけに、このくらいのインパクトでは全然普通の文章として受け入れらてしまうという罠が潜んでいました。

 瞬一郎が作中ステンドグラスに関して、子供の頃にくすんだ“本物”よりも光り輝く“模造品”に目を奪われ、自分がその本当の価値を理解できていなかったことを知り、その経験が「とにかく一度、最高のものに触れなければいけない」といった現在のスタンスに繋がっていると述べていましたが、その考えはどうなのでしょうか。たとえそれが“19世紀以降に造られた価値の低いコピー”であろうがなかろうが、美しいと感じたものを素直に綺麗だと受け取ることの何がいけないのかがわからない。そして、そういった観光客たちの価値観を否定するのもおかしい。

 そもそも。デュシャンの「泉」のようなトイレをぽんと置いただけのものを芸術作品として捉えようと思ったら、その背景の創作意図とそれまでの芸術の歴史まで理解しないと本当の価値や意義が見えてこないわけで。そういう意味では瞬一郎や元教授が支持するくすんだ色の“本物”も知識がないと理解できないという点ではわけのわからん現代アートとまったく同じなんですよ。
 となるとつまりは「芸術」を鑑賞するためにはまず、知識ありきということになりますよね? しかしそこまで敷居を高くしないと理解することができず、一般の人間にその良さがまったくわからないものだけを「芸術」とし、わかりやすく美しいものに「見るべきものはない」と烙印を押すのならば、果たして芸術って何なのだろう。美しいものを美しいと言うことを肯定しない「芸術」に意味はあるのだろうか。

 価値があるのはわかる。それは積み重ねだから。でも、だからといって限定された人間だけが愛でるものだけを真の「芸術」として良いの? 何の知識も持たず、直観的に感動した人々の数多の感動を踏みにじってまで「芸術」を「芸術」として扱う意味はあるの? そこまで高尚でなければないの? 対象者と理解者をぐぐっと絞った時点で、そのジャンルが大きく衰退し始める気がするのは勘違いでしょうか。――なんて、取り立てて芸術に明るいわけでもない癖に色々と考えてしまいました。

 ていうか、ミステリ読者のみんながみんな芸術に詳しいわけじゃないのだし、せめて主題となるシャガールのステンドグラスの写真くらいはデフォで載せといておくれよ。切実に。


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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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