2011.05/15 [Sun]
ジェームズ・ルシーノ『スター・ウォーズ 暗黒卿ダース・ヴェイダー(上)』
![]() | スター・ウォーズ 暗黒卿ダース・ヴェイダー〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books) ジェームズ ルシーノ James Luceno ソニーマガジンズ 2005-12 売り上げランキング : 249552 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★★
そう言うと思ってましたよ、将軍。
命令にそむいた罰がなんであれ、その危険をおかしてこうしたのは正しいことでした
共和国とジェダイ騎士団は滅び、皇帝パルパティーンが君臨する帝国が生まれ、銀河は暗黒時代へと突入。独裁政治の執行者ダース・ヴェイダーは、帝国に逆らう者や生き延びたジェダイを次々と血祭りにあげていった。やがてその名と黒い甲胄に包まれた異様な姿は、恐怖の象徴となる。しかし、甲胄の下でアナキン・スカイウォーカーはいまだ地獄の業火に焼かれているのだった。映画『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』の直後を描く小説。
『エピソード3』を観たので再読。オーダー66を逃げ延びたジェダイたちのその後と共和国から帝国への移行に伴う銀河の変貌、ダース・ヴェイダーとなったアナキンがシスの道を受け入れてゆく過程が描かれており、「スター・ウォーズ」ファンなら一度は読んでおきたい小説でしょう。
ヴェイダーになっても不満たらたら愚痴ばっかりなアナキンと、そんな弟子に対するイライラを懸命に我慢するパルパティーンが見られるのも多分この本だけ。恐怖の権化であるハズの帝国のトップ2が妙に人間くさいから困る。
映画ではオーダー66の発布によって味方だと信じていたクローン兵に裏切られ、不意打ちの末に数多くのジェダイが命を落としましたが、果たしてそれで全員が死んだのか?というと甚だ疑問が残ります。また、オビ=ワンと強い絆で結ばれていたコマンダー・コーディがいとも簡単にジェダイ抹殺の命令に従ったことでその非情さが強調されています。しかし、クローンとて人間。感情があります。みんながみんな、そんな機械的な対応ができるわけがないと思った人も少なくないのではないでしょうか。
それらに明確な答えを与えてくれるのがこの小説。クローン・トルーパーの中にも戦友たるジェダイを殺せという命令に逆らい、戦場から逃がしてくれた者がいた。
映画でこれをやっちゃうと最終章として締まりがなくなってしまうけれど、こういうシチュエーションが見たかった! なんて熱い展開!!
時系列的には『EP3』のまさに真裏から始まります。オビ=ワンがウータパウでグリーヴァス討伐に向けて動いている頃、他の星と同様に辺境のマーカナでもジェダイ・マスターのローン・シュラインらがトルーパーを率いて戦っていた。
タイトルこそ『暗黒卿ダース・ヴェイダー』とありますが、本作の主人公はこのローン・シュラインです。ローンはアナキンやオビ=ワン、カウンシルのメンバーのように決して強いフォースの持ち主ではありません。自らのフォースに弱りを感じ、バトル・ドロイドを吹き飛ばすことさえままならない。言ってみれば本来モブキャラにあたるような存在です。
そんな彼を敢えて主役に持ってきて、ジェダイ・オーダーが崩壊したとき、彼ら生き残ったジェダイはどんな道を選択するのか、オーダーの復興を目指し皇帝の打倒を目指すべきか、それともジェダイとしての生き方を棄てささやかな幸福を守るのかを描いてみせる。これが「SW」の懐の広さ。
SWスピンオフではトップクラスの傑作です。
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