2011.05/11 [Wed]
マンガ総評:長谷川光司『フジアキコ物語~ウルトラマン撮影秘話~』
![]() | フジアキコ物語~ウルトラマン撮影秘話~ (単行本コミックス―KADOKAWA COMICS特撮A) 長谷川 光司 角川書店 2005-04-30 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
あなたは正義の味方としてこの場を収める義務があるハズでしょ
ましてイデくんはあなたの代わりになるべく炎に巻かれているのよ――いいから、とっとと行きなさいっ!!
昭和41年、勇猛果敢に怪獣と戦う「科学特捜隊」の中に一人の少女がいた。その名は……フジアキコ! ムラマツ、ハヤタ、イデ、アラシといった彼女を取り巻く科学特捜隊の面々は誰もが曲者揃い。そこに、ウルトラマンや、様々な怪獣が加わっててんやわんやの大騒ぎ! フジ隊員と愉快な仲間たちが贈る……トンデモ撮影秘話の開幕!? 全1巻。
傍若無人やりたい放題のフジ隊員に、共演の男どもとウルトラマン(着ぐるみ)、怪獣(着ぐるみ)が振り回されるというフォーマットで『ウルトラマン』の撮影秘話についてあることないこと描いた日常系(?)コメディ。
作中の登場人物たちは「ハヤタ隊員」を演じているハヤタ隊員という設定になっていて、一種のメタフィクション的な劇中劇スタイルが採られています。独善ナルシストのハヤタ隊員という謎なキャラ設定もありますが、なんといってもフジ隊員を萌えキャラにしてマンガを作ってしまったその心意気が素晴らしい。
理不尽な怒りでヘタレなウルトラマンにブチ切れるわ怪獣を下僕にしてキノコ狩りに出掛けるわと、最初から最後まで暴れまくっている癖して、たまにしおらしかったりするから困ります。よく心得ていらっしゃる。ブルトンに腰掛けるフジ隊員とか、なかなかどうして可愛らしいじゃないですか。
実際にフジ隊員を演じた桜井さんが原案ということもあり、さすがにここまでのじゃじゃ馬ではなかっただろうけれど、一部は本当にあった出来事を基にしているらしいです。アンヌ隊員(友里アンヌではなく海外隊員の女の人)の回のバレンタイン話あたりは、当時チョコをあげる慣習がまだ根付いていなかったという背景のリアルさも鑑みると結構実話っぽい気がします。
また、巨大フジ隊員によるビル破壊やガマクジラの魚眼レンズ、野点、ホシノ君の正式隊員入りなど、『ウルトラマン』本編のシーンに独自の裏設定を与えてマンガのエピソードとして取り上げているのも、ファンならにやりとしてしまう。
初代『ウルトラマン』をそれなりに見こんでいる人ならばきっと楽しめること請け合い。しかしこれ、単行本に全話収録されているわけではないんですよね。未収録回が何話分かある。刊行から5年以上経っていますが、それだけが未だに心残りです。
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