2011.05/01 [Sun]
古野まほろ『天帝の愛でたまう孤島』
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★★★★★
まとめようか。それが探偵だから。
「莫迦な、あれは、あれは死神仮面だ!!!!」『十角館の殺人』と『孤島パズル』と『そして誰もいなくなった』を鞄に入れて、二泊三日の超豪華避暑島合宿。もちろん、密室連続殺人劇の幕が上がる。犯人はアカマントアオマントクチサケニンゲンシニガミカメン!? 古今東西の閉鎖的状況を大胆不敵に参照するオタク系本格、早くも3冊目。
『天帝』シリーズ 第3作。
読み終わってまず最初に思ったこと
ええええええええぇぇぇぇぇぇっっ!!!????
竜騎士07もびっくりな感嘆符の付け方だってしちゃいますよ。
まじか。古野まほろ。ありえない。どんだけなの。この本に関してはなるべく前情報を入れず、あらかじめ『果実』『御矢』を読んだ上で取り掛かるのが最も楽しめる読み方だと思います。まほろファンの中でも賛否両論――否の方が圧倒的に多い作品ですが、個人的には未読の『鳳翔』を除けばまほろ史上最大の問題作。こういうことを普通にやらかすから怖い。
今度の舞台は孤島。隠し財宝伝説に祈歌、館、死神仮面 etc……。本格好きが涎を垂らして喜ぶようなガジェットがこれでもかとてんこ盛り。それだけでも胸が躍るってものです。
推理の過程において“水路からの侵入”の可能性を棄却するための措置として、わざわざ特別凶暴なピラニアが生息している設定にしているところなんか素敵すぎる。すべての設定は「探偵小説」であることを前提にお膳立てされている、と。
名探偵の業? 名探偵の運命? そんなレベルではもうありません。「名探偵」の存在意義を根本から覆すアンチ・ミステリな側面の強い結末でありながら、並大抵のミステリ小説では到底太刀打ちできないほどの高水準な本格でもある。
死神仮面の正体を特定への過程はまさにシンプル・イズ・ベスト。ほぼ箇条書き状態の伏線回収に1行1行ページを繰り直し、あからさますぎるほどの書かれようとそれを完全にスルーしてきたことにダブルで驚嘆させられます。これだからまほろはやめられない。
ついでにいえば最終的に明かされる真相が物語全体を情緒あるものにしていて、物量・質的にもかなり読み応えのある小説です。
『天帝』シリーズ 初期三部作を〆るのに相応しい傑作。いや、これで本ミス20位圏外だったのか……。読者投票では14位に『御矢』、17位に本作、18位に『果実』で3作ともランクインしているけど。ていうか期間内にあのボリューム&クオリティで3作出していた事実の方に驚いた。
あと、この間本屋に行ったら何気に『群衆リドル』が増刷されていました。オメ!
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