2011.04/29 [Fri]
水生大海「ムーンウォーク」
![]() | 少女たちの羅針盤 水生 大海 原書房 2011-04 売り上げランキング : 402877 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
本当にやりたいことなら、やめて時間が経ったらまた始めると思う。
やりたくなってやりたくなって、そこから逃れられないよ
女子高校生四人組の演劇ユニット「羅針盤」。ストーリーとコンクールでその名を知らしめたが、メンバーの突然の死によって活動を停止する。それから四年の月日を経て復讐は成し遂げられた。時は遡り、中学時代。後に親友となり、共に羅針盤を立ち上げることとなる瑠美とバタ、ふたりの出逢いもまた“事件”だった――。
「羅針盤」シリーズ 番外編。
『少女たちの羅針盤』の映画公開を記念して、表紙が映画仕様でリーズナブルになった(1000円切った!)新装版が発売中です。しかもこれに瑠美とバタが知り合った経緯を描いた描き下ろし短編まで収録されているのだから、お買い得ってもんじゃない。買わなきゃ損。
続編『かいぶつのまち』との兼ね合いで装丁・サイズに統一感がほしい人、既に単行本を所持している人にとっては悩ましい問題ですが、何にせよ『少女たちの羅針盤』のようなハイクオリティな本格ミステリをより多くの人に手に取って貰える機会が得られることは喜ばしい限り。
本作「ムーンウォーク」は瑠美に届いたストーカーメールにまつわる日常の謎もの。はきはきとした物言いで他者とぶつかる瑠美と、そんな彼女を疎ましく思いながらも巻き込まれるバタ。ストーカー捜しを本筋にしつつも、そこで描かれるのは思春期の中学生のありのままの姿です。塾生の女子生徒によるやっかみ、自分が本当にやりたいことは何のかという戸惑い。短編ながら水生大海の魅力が存分に詰まった一作です。
「羅針盤」の話はたぶんこの作品が最後になるのだろうけれど、今後も追いかけていきたい作家さんのひとりですね。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form