2011.04/26 [Tue]
獅子宮敏彦『天命龍綺 大陸の魔宮殿』
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★★☆☆☆
たとえ龍玉が人の手によって落とされたものとはいえ、天命が大玄から去っているのは明らかなのです。
大陸の強大な王朝に侵略される小さな島国・朱論。巫女の宝樹は、幼馴染みの夏座丸たちと辛くも脱出するが、漂着した先は、皇帝の座を巡る陰謀渦巻く大陸の都だった。祖国を滅亡させた国に身を寄せた少年少女たちを待ち受けていたのは、“龍”が棲むといわれる宮城での不可解な事件。城内では、忽然と人が消え、動く筈のない彫刻の龍が天罰を下す。事件の謎に迫るとき、伝説の“龍”の真実が明らかに。
「天命龍綺」第1作。
ここ最近色々と手を出していたので久し振り(?)にミステリ感想。古代中国風世界観のファンタジーと本格ミステリを一緒盛りにした贅沢な小説です。
全体の割合としては7:3でファンタジー/ミステリな印象。夏座丸たちの逃走劇を主にしつつ、ストーリーの要所に彫像による天罰の謎と消失トリックが置かれています。事件が事件だけに謎を解く行為そのものが一国の行く末を大きく変えてしまのではないかという危惧はありましたが、推理はあくまでも裏方内輪でひっそりと披露され、あってもなくても特に大勢には影響しない仕様。誰が探偵役を務めるのかもいざ解決編に突入するまではっきりとせず、物語においてそもそも推理する必然性が皆無なのもなんだかなぁという感じ。
ミステリ的な事案が解決しても作品そのものは完全に“次巻へ続く”になっているのもアンバランス。個別に見るぶんには特に気にならないのですが、ファンタジーとミステリの融合に関しては、互いが互いを引き立たせる関係になっているとは現段階においては言い難く、いま一歩といったところでしょうか。
主役となる少年少女のキャラが立っていないのは気になりました。朱論脱出組+αの大人数が入り乱れても誰が何を喋っているのかきちんと判別できるので、決して書き分けができていないわけではないのですが如何せんキャラクター性に欠ける。現代小説の社会派モノではなくエンタメ小説のファンタジーなんだから、登場人物の魅力でもっと惹きつけてくれないと愛着が沸いてこないというか。これから先、ちょっときついかもしれません。
とりあえずは待て続刊、ですね。
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