2011.04/23 [Sat]
全民煕『ルーンの子供たち 冬の剣(3)』
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★★★☆☆
ぼくが裏切った人はぼくに、決して深い恨みを抱くな、と言いました。
生きていく上で、消すことのできない恨みなどというものは黒い炎を燃やすようなものです。
伝説の剣ウインタラーを狙う追っ手から逃れるために、極寒の地レンムへと向かった少年ボリスは、そこでかつて別れた剣の師匠ウォルナットに再会する。旅を供にする二人が向かった先は、世界の果てにある月の島――。そこは、古代魔法王国の歴史を深く刻んだ幻の島で……。
「ルーンの子供たち 冬の剣」第3作。
新しい土地での新しい出逢い。ハードカバー版 第2巻の“月の島”編に突入です。
月の島は外部との接触を極力絶ち、独自の政治形態を持つ閉じられた世界。一緒に旅をしていた師匠が故郷である島に戻ることになり、ボリスは彼といたいがために強固な反対を押し切って同行することを決めます。
訪れた島は大陸に比べると確かに不自由な場所ではあるけれど、ウォルナットが言うほど酷いところのようには感じませんでした。
ただしそこは排他的な島民文化。剣の司祭・ナウプリオン(=ウォルナット)の一番弟子として最初から特別扱いで迎えられた“外の人間”に島民の殆どは良い感情を抱いておらず、特に島で通うことになった学校の同年代からの風当たりは強い。ボリスに話し掛けてくるのはほんの一握りの人間だけ。
しかしながら、自分の存在を無視されることに淋しさを覚える姿は、いままでのボリスには見られなかったものでした。イェーフネンを喪って以来、他人にどう思われようが関係ないと頑なに線引いてきた心が徐々に溶けつつある何よりの証拠です。以前までの一人で生きていければそれで良いと思っていた頃からは、確実に変わってきています。
島内で渦巻く嫉妬と策謀、大陸にはボリスの足跡を追う更なる刺客。大きな出来事も起こらずに大人しめの今巻でしたが、事件の火種はじりじりと燻り、忍び寄る。ベルノア伯爵もまだまだ諦めてはいないので今後の展開次第ではロズニスとの再会も或いは……?
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