2011.03/31 [Thu]
映画『オーロラの彼方へ』
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★★★★★
まだ生きてるぞ、隊長
1969年、ニューヨーク上空に珍しいオーロラが出現した日、消防士フランク・サリバンは救助を終え、妻ジュリアと6歳の息子ジョンの待つ家へと戻ってきた。親子3人の生活は幸福な輝きで満たされていた。ちょうどその日のオーロラのように。だが、その2日後、フランクは殉職する。息子ジョンは深い哀しみに暮れる。それから30年。再びニューヨークにオーロラが出現した日、ジョンはふと父が愛用していた無線機を見つける。そしてそこから男の声が聞こえてくる……。まるでそれは父と話しているようだった。 (2000年 アメリカ)
文句なしの傑作。わが人生史上最高の映画だと思っているこの作品。何度見ても素晴らしい。レンタルショップで容易に借りられるとはいえ、こんな名作が廃盤になっているなんて有り得ない。即刻BD化するべき。
物語はオーロラの夜、私生活が上手くいっていない警察官のジョンがふとしたきっかけで見つかった古い無線機を弄っているうち、30年前――死の前々日の父親へと繋がるところからスタートします。最初はそうと気付かず、意気投合するふたり。さらに翌日交信した際、ジョンは通信相手が生前の父親であり、それが死ぬ1日前であることを知る。なんとしてでも父親の死を回避したい彼は、30年前の火災現場でフランクが直観に従って動いた結果殉職したことを伝えます。
初めは信じていなかったフランクだったが、ジョンの“予言”した通りに進む野球の試合と、聞いた話とぴったり符合する火災現場にまさかと疑念を抱き、絶体絶命の状況の中でとっさの判断と逆の道を選択する。結果、フランクは生き延び、ジョンの生きる時代ではフランクは10年前にガンで死亡したことになっていた。
時間ものです。過去を変えることには成功したものの、結局フランクは10年も昔に死んでいて再び逢うことは叶わないという展開はなかなか淋しいものがあります。30年前のフランクの時代と現在のジョン、ふたつの時代を生きている親子を回想ではなく同時進行で描くことによって、遠く離れた場所にいる現在進行形の物語として両方が“生きている”ことを実感できる構成が巧みです。これはフランクの物語であり、ジョンの物語でもある、と。
この構成が本当に生きてくるのが中盤以降。実は本作はフランクが殉職を回避してはい終わり、ではないのです。その部分はむしろ前段階に過ぎない。本当のストーリーはここからです。
フランクが火災による殉職を回避したことにより、ジョンの時代ではある変化が起きていました。ジョンの追っていた連続看護師殺害事件=通称“ナイチンゲール殺人”の被害者数が激増し、あろうことか改変前の現在では健在であったハズの母親もその被害者となっていました。フランクが生き延びたことで命を落とした人がいる。ふたりは無線機越しに情報をやりとりながらナイチンゲール殺人の阻止に挑みます。
時間改変によるバタフライ効果によって物語はいっきにサスペンスフルな展開に突入します。フランクの葬儀に出なかったことで母親が目を付けられことになってしまうのですが、ここらへんの話運びが非常に上手い。何故、30年後にそのような事態に陥っているのかの理由付けが的確に示されているので観ていて疑問に思うことがまるでない。
過去と現在、両方から犯人を追い詰める過程でサリバン一家は狙われ、未来の情報を元に犯行阻止に奔った結果、フランクは殺人の容疑を掛けられてしまう。
そしてこれらの手に汗握るサスペンスが、やがて奇跡のようなラストに結実する。NYの空を覆う幻想的なオーロラがもたらした、ひとつの奇跡です。すべてはこの瞬間のために。
私はこれからもたくさんの映画を観ていくだろうけれど、
本作『オーロラの彼方へ』を越える作品に出逢うことはないと思います。
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