2011.03/27 [Sun]
西尾維新『零崎曲識の人間人間』
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★★★☆☆
だったら、そんな僕らしさはいらない。らしくないことを、してやるまでさ
『零崎一賊』――それは“殺し名”の第三位に列せられる殺人鬼の一賊。“少女趣味”こと零崎曲識が、一賊に忍び寄る危機を察知し、ついに表舞台に現れた。一賊の結束はどうなるのか。“音使い”零崎曲識の闘いが今、始まる!
「零崎一賊」第3作。
入間人間ではないのです。『人間人間』。どういう意味なのかはわからないけど。巷では「人間」シリーズなんて(ry
今回の「零崎」は表舞台に立たない零崎、零崎曲識が主役。いや、脇役と言った方が正しいかしら(鑢七実的言い回し)
四神一鏡、殺し名、呪い名、玖渚機関、ER3――。「零崎一賊」を読んで毎度思うのは、本家「戯言」の死に設定の多さ。いくら魅力的なバックグラウンドがあっても作中で拾い切れていなければ、むしろマイナスに感じてしまいます。「戯言」シリーズなんてたったの6作で終わらせる必要はまったくなかったわけで。結局こうして設定補完の裏話が作られていることを考えると、ちょっと複雑な気分です。
第1作からここまで、時系列もバラバラで語られる物語も断片的にも関わらず、不思議とレギュラーとサブキャラが一貫されてきているのが面白いところ。
本作には人識が伊織ちゃんの義手を手に入れるために頑張る「クラッシュクラシックの面会」も所収。伊織ちゃん好きには待望の『零崎双識の人間試験』後日談です。収録作の中ではこの話が特に好きでした。
曲識の普通のお兄さんらしい姿が微笑ましく、「ランドセルランドの戦い」での双識、「ラストフルラストの本懐」の軋識への対応も含めて零崎一賊の暖かな家族愛が伝わる連作短編になっています。
逆に問題だったのが哀川潤との関係で、最後の一文には「んん?」と首を傾げたくなりました。他の作品でもそうですが、西尾維新は恋愛感情を描くのには向いていない――むしろ描けない作家だと思う。
○○○→×××といった具合に、キャラクターに役割としての恋愛を割り振ってはいるけれど、それはあくまでも“記号”であって“感情”としては納得させられない。「戯言」シリーズのいっきーと玖渚の関係もそうだったし、『刀語』の七花→とがめもそう。『きみとぼくの壊れた世界』はもっと顕著。アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』でキョンがハルヒにキスする流れがまったく理解できなかった、あの感覚と同じです。相手のことをこんなにも想って、心が揺れて……というものが皆無なため、いざ感情の方向が示されたときに非常に唐突な印象を受けます。
これは私が元りぼんっ子で男のくせして少女漫画を愛読していた(いまも雪丸もえ『ひよ恋』とか買ってるw)人間だから余計にそう思うのかもしれません。なんというか。胸きゅんが決定的に欠けてるよね?
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