2011.03/25 [Fri]
西尾維新『不気味で素朴な囲われた世界』
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★★★☆☆
勘違いするなよな。
病院坂とお友達を気取れる自分を、お前はひょっとしたら特別だと思ってるのかもしれねえが――
特別な人間に取り巻けることは、特別な証でもなんでもねえ。
そういうのはただの寄生虫っつーんだよ――あやかろうと思ってんじゃねえ。
時計塔が修理されない上総園学園の二学期の音楽室。そこから始まった病院坂迷路と串中弔士の関係。歪な均衡を保つ学園の奇人三人衆、串中小串、童野黒理、崖村牢弥。そして起こってしまった殺人事件。迷路と弔士による探偵ごっこの犯人捜しが始まり、崩れたバランスがさらに崩れていく……。
「きみとぼく」本格ミステリ 第2作。
巷では「世界」シリーズなんてセンスのない呼ばれ方をされている当シリーズ。本来なら『きみとぼくの壊れた世界』でノンシリーズとして終わるつもりが、西尾維新がインタビューなどで「『不気味で素朴な囲われた世界』も書きます」なんて冗談で言っていたら、本当に出すことになってしまったというちょっと珍しい経緯による作品。
我が家にあるのは発売直後に購入した初版本なので積読本の中ではかなり古株の部類。何故いままで読んでこなかったかというと、前作の壊れっぷりに若干引いている部分があったからです。なんというか登場人物たちの行動が理解に余る。“「きみとぼく」のための本格ミステリ”なるキャッチコピーはまさしくその通りで、このシリーズは“世界”の外にいる読者には到底追いつけない、彼らなりのバランスと倫理観の上に成立しています。
そして本作のこの真犯人、最低すぎる。あまりの意味不明さに、思わず動機を語った箇所を何度か読み返してしまったくらい理解不能です。しょうもないとかそういったものを通り越して、ただただ「わからない」に尽きます。
それもそのはず。そもそもの話、彼ら彼女らの思考は論理破綻を起こしています。しかしながら、自分自身でそのことには気付いていない。にも関わらず、感情のままに行動するのが“正”だと信じ切っている。こと後半~終盤においては西尾維新お馴染みのキャラの掛け合いに苛立ちを覚え、嫌悪さえ感じました。
本当に幼稚な発想で為された、まったく単純で稚拙な犯罪。こんなことで人を殺してしまう神経は狂っているとしか表現のしようがない。『不気味で素朴な~』とは言い得て妙です。
ミステリ読みの盲点を突くような話も出てきますが、実際のところはどうなんでしょう? 既にどっぷりミステリに浸かっている身としては如何とも判断し難いです。無口な病院坂先輩の心の声を代弁する弔士にまさかの『向日葵の咲かない夏』エンドを疑っていたら全然違ったし。
いちばん笑った小ネタは勿論「イエス、プリキュア5」ですね! 言うまでもなく。
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