2009.05/09 [Sat]
初野晴『退出ゲーム』
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★★★☆☆
わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない。
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリ。
暴力的な岩崎亜衣(どちらかといえば野村響子かな?)こと穂村チカが語り部の“社会派日常の謎もの”ミステリ。それに尽きます。日常の謎なのに、社会派。しかも、やってることもパズルというか、これもミステリなのか?という特殊なシチュエーション続々。今までに読んだことのない新しいタイプのミステリに出くわしてしまった!
雰囲気としては米澤穂信の「氷菓」から毒(後味の悪さ)を抜いたところに、社会派成分を強めて且つ、ハッピーでコーティングしました、みたいな。いや、そう書くとまったく別物のように感じますが、実際そんなかんじです。
おもしろいのは、日常の謎でありながら、どの話にも“死”が関わってくるところ。これが社会派たる所以なのか。だって、殺人事件みたいな人の“死”と関係なく、楽しい謎解きでみんなが幸せになれるように設定されたのが日常の謎なのに。でも、それが結果的にハートフルに作用するわけで。そうすると、やっぱり日常の謎には違いないんですよね。趣旨的に。
収録されているのは全4篇ですが、個人的には表題の「退出ゲーム」がお気に入り。即興劇の中で、いかに物語に破綻なく自然な流れで相手チームのひとりを退出させる(舞台から降ろさせる)かを競うゲームの様子を描いた作品。おおぉっと唸らされること間違いなし。
てか、この書き方からして続き出るよね?
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