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深水黎一郎『トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ』

トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)
深水 黎一郎

講談社 2008-08-07
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★★★☆☆
だからそれではダメだと言っているんですよ。
舞台上で登場人物が死ぬときは、
本当にいま舞台上で人が死んだのだと、観客の一人一人が思うようでなければならないんです。

〈開かれた密室〉である舞台で起きた惨劇! プッチーニ作曲の歌劇『トスカ』上演中、主演女優のナイフが相手役の首筋に突き刺さった! 「開かれた密室」である舞台に、罠を仕掛けた犯人の真意は!? さらに前例のない新演出の予告直後、第二の犠牲者が…。芸術フリークの瞬一郎と伯父の海埜刑事が、名作オペラゆえのリアリズムを逆手に取った完全犯罪の真相を追う。


「芸術探偵」シリーズ 第2作。
 オペラ上演中の舞台上での殺人とは、これまた『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』で昔あったようなシチュエーション。前作『エコール・ド・パリ殺人事件』でも思ったことですが、深水さんの作品は古いとまでは言わずとも一昔前のミステリっぽい作風で、あらすじだけ聞くと新鮮味がないように感じます。
 しかしそこは「芸術探偵」。本作では『トスカ』を題材に、オペラというものをまったくの初心者でも付いていけるほどわかりやすく説明し、その上で深水流『トスカ』の演出案まで創出してしまう。

 私のような門外漢はこの“スポレッタ黒幕演出”がオペラ界にとってどれほど斬新なアイディアなのかはわかり兼ねます。けれど、ひとつの作品を“読み替え”ることで、まったく別の意味合いを含ませるその行為がどのくらいすごいことなのかは充分に理解できているつもりです。
 喩えるなら、もともとの『トスカ』は映画『アイ・アム・レジェンド』でいうところの劇場公開版。作中で言及された新演出は別エンディング版です。定まった視点で固定された“世界”に、とある解釈を与えることで一瞬で作品そのもの構図を根幹からがらりと変えてしまう――これはまさしく叙述系のミステリと同じテクニックなのです。
 そもそもミステリと“読み替え”は親和性が高く、例えば既にある設定から後付けで辻褄合わせを行い、伏線として利用する(『相棒』のスタッフがよくやる)のも一種の“読み替え”に他なりません。そういった観点では、本筋以外にもミステリとしての驚きが用意されているのが本作でした。

 メインとなる謎こそ大それたトリックがあるわけではないものの、“スポレッタ黒幕演出”と事件の全容がオーバーラップされる構造といい、芸術×ミステリの相乗効果は前作よりも数段増しています。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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