2011.03/17 [Thu]
西尾維新『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』
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★★★★★
全てが結果なのだと、私は思うけれどね。
きみはまさか《天才が天才であり天才であり天才である》
なんて、おばかなことを考えているんじゃないだろうね?
絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、5人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする! 工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友(くなぎさとも)(♀)とその冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃん(♂)は、「天才」の凶行を“証明終了(QED)”できるのか?
第23回メフィスト賞を受賞した西尾維新のデビュー作で「戯言」シリーズ 第1作。
わが人生を変えたといって良い1冊。およそ8年振りの再読。それも4読目か5読目です。
いま現在、私の部屋には講談社ノベルスが84冊あるのですが、そもそも講談社ノベルスを読み漁るきっかけになったのがこの本であり、本格ミステリの面白さに目覚めたのも本作(小学生時代は乱歩の「少年探偵」シリーズやアガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』、はやみねかおるなどを読んでいたものの、明確にミステリが好き!というわけではありませんでした)
この作品がなければお気に入りのメフィスト賞作家たちに出逢うこともなかったし、ともすれば読書の嗜好すらまったく違っていたかもしれない。そのくらいの衝撃を受けた作品です。
西尾維新の最大の魅力はやはり文章の語感の良さと特有の様式美にあると思います。ページを開いたときに文字の並びに美しさを感じるというのはそれまでの読書体験では得られないものでした。
つまるところ。
また、密室なのだった。
二つ目の首斬り死体に、二つ目の密室。
二度目の首斬り死体に、二度目の密室。
――と、こんな具合で文が並びます。
文字数や音(韻)を上手く合わせて、見た目を整える。この場合だと1行目→3行目まで段々に文が長くなっていき、3行目と4行目の文字数が一緒。読んでいて、見ていて非常に心地良い。西尾維新といえばキャラクター造形や時に哲学的だったり、軽妙でおふざけ満載なウィットに富んだ会話ばかりが取沙汰されがちですが、個人的に注目すべきはこの部分だと思います。
そんな感覚を堪能したい場合、“画”として映えるのは断然ノベルス二段組みです。文庫だと上から下まで文字がびっしりでいまいち綺麗でなく、俯瞰した際の美しさがわかり難いです。
ミステリとしても大変面白く、一風変わった首斬りの論理については読み始める段階でメタ的な伏線、大きなヒントが与えられています。この論理と三つ子メイドの存在をステップに事件解決後に明かされるとある悪戯の存在、さらにその上位の解決へと繋げていく様は見事です。
最近はミステリから離れていると言われる西尾維新ですけれど、「刀語」「りすか」は与えられた伏線から攻略方を推理するミステリ、「化物語」でさえ構造的に見ればミステリ的技巧を孕んでいる。そのすべての原点が本書にあります。
これを読まないでいるのは読書生活上の大きな損失。未読の方は是非に。
ただし、キャラっぽすぎるので小説にリアリティを求める人は――て、表紙絵の時点で相応の覚悟はできてますよね?
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