2011.03/11 [Fri]
映画『シャッター アイランド』
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★★★★☆
ボストンの沖合いに浮かぶ孤島シャッターアイランド。そこには、精神を病んだ犯罪者を収容するアッシュクリフ病院があった。1954年9月、連邦保安官のテディ・ダニエルズは、相棒のチャックと共にこの島を訪れる。目的は、女性患者失踪事件の捜査。レイチェル・ソランドという犯罪者が前夜、鍵のかかった病室から消えてしまったのだ。行方を追う唯一の手がかりは、“4の法則”という暗号が記された意味不明な一枚の紙。病院長ジョン・コーリーから事情を聞いたテディとチャックは、休暇で島を離れたドクター・シーハンが事件に関与していると推測、聞き込みを開始する。だが、テディが島を訪れた裏には、事件の捜査とは別の理由があった。 (2010年 アメリカ)
結論から言っちゃえば本作、見始める前のあらすじを聞いた段階で何がどうなっているのか9割方見当がついちゃいます。真相に至るまでの伏線はかなり丁寧に、見落としてしまうくらいさり気なく張り巡らされているのだけど、そんなことをすっ飛ばして真相が見抜けてしまうのは残念至極。
しかしながらそれでも私はこの映画を面白いと思ったし、見ていて惹き込まれました。むしろ最初から“それ”に気付いているからこそ、余計な部分=謎解きに惑わされず、テディがどれほどの苦しみを抱え、この時間を生きているのかがよくわかる。この映画では「オチが見え見え」であることは必ずしもマイナスにはならないように感じます。
シャッターアイランドを覆う暗雲やどこか陰鬱な空気は見る者の気持ちを滅入らせ、いつまでたっても判然としない状況に疑心暗鬼になる。テディが唸される悪夢は幻想的な情緒を持ち、何かの暗示のようにもとれる。
われわれが不可解だと思う部分でテディもまた疑問を抱き、辻褄の合わないところで同様に違和感を覚える。観客の目線はテディとまったく同一のところにあります。いわば映画そのものが追体験になっているのが興味深い。
現実に耐えきれずに目を逸らした男が逃げることをやめて、真正面から真実と向き合った結果、その重みに耐え切れずに潰れてしまう。哀しい物語です。
オチを気にしすぎて世間の評判は芳しくなさげな作品ですが、過程に目を向けるとなかなか楽しめるのではないでしょうか。
――というか、実はミステリ読み的には結構驚かされた部分もあって、
(以下、若干のネタバレと少しの毒舌)
作品そのものが精神病患者の事実誤認を利用した叙述トリックであることは殆どの人間が気付くだろうけど、「4の法則のアナグラム」や「施設関係者がある程度までテディの妄想に寄り添っていた事実」まで看破できた人間はそうそういないんじゃないかと。
厳しい言い方で申し訳ないですけど、この作品でネタが割れてつまらないと言っている人って、トリック当てのミステリで「犯人わかっちゃったよ。超簡単」と言うくらいの勘違いを犯しています。そんなものは傾向と対策的なメタ推理(私もこれでした)で見抜いただけで、そこに至るまでの論理展開をまるで無視している。そんな裏技紛いな手段で真相に辿り着いておいて平然と駄作と決めつけるのは、ちょっと乱暴が過ぎる。
膨大な伏線や謎解きの手順において映画『シャッター アイランド』はかなり優秀なミステリです。ただし、そこまで考え抜かなくてはいけないほどの意外性が真相になかったのと、受け手がそれを理解するほどにミステリ馴れしていないことを想定できなかったのがこの映画最大の敗因。謎解きをウリにした宣伝文句もあながち間違いじゃなかったんだけどなー
追記。
ネットで感想漁っていて知ったのですが、本作の吹き替えは「超日本語吹替版」だったらしいです。
確かに字幕版だと情報量(文字数)が制限されるので謎解き映画向きではないですもんね。
普通に字幕で見ちゃったよ orz
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