2011.02/28 [Mon]
小川一水『妙なる技の乙女たち』
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★★★★☆
だってそっちには、迎えに来てくれそうな金髪の王子様なんていないでしょ?
時は近未来2050年。赤道直下の宇宙産業都市リンガには、ひたむきに働く女の子たちがいた。宇宙服のデザインに挑む京野歩、月と地球を結ぶ軌道エレベーターに乗務する犬井麦穂……。窮地に立たされても夢とスキルとプライドで乗り切る彼女たちのお仕事オムニバスストーリー。文庫限定特別書き下ろし短編収録。
最前線の開拓者や大きな物語のキーとなる存在にスポットが当てられがちの一般的なSFとは打って変わって、本作はどこにでもいるような“SF周り”で頑張る女の子たちを主人公に据えた一風変わったSF小説。時代や働く場所こそ違えど、恋や仕事に悩み、苦戦し、奮闘して答えを出す姿は現代とまるで変わりません。何ら変わらないけれど、それをSFの枠内でやったことによって、日常の延長線上にあるSF、地に足の着いた世界観を創出することに成功しています。
『源氏物語』から軌道エレベーターの時代に至るまで、人間の考えていることはどんなに時が経ってもそう変わり栄えはしない。ロマンですねー。悠久の時の流れについ想いを馳せてしまう。
“どんな脇役・端役にもその人の物語がある”を座右の銘とする私にとって、大それたことなんて殆ど起きない、このリンガ島に暮らす彼女たちのオムニバスストーリーはたまらなく好きな趣向でした。
お気に入りは第四話「セハット・デイケア保育日誌」。良いよなぁ、こういうの。長い人生のうちの一瞬の邂逅というか。遠距離系の恋愛ソングでもそうですが、別れの場面があって、確かにこの瞬間、互いに想い合っているのだけどきっと再会できる可能性は限りなくゼロに近くて――。そういうシチュエーションには弱いんです。ツボすぎる。
『第六大陸』に感銘を受けて2作品目を読んでみた小川一水、今作も良かったです。
来月もハヤカワ文庫から1冊出るみたいなので楽しみ。
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