2011.02/12 [Sat]
山口芳宏『雲上都市の大冒険』
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★★★☆☆
じゃあ、犯人を一発殴ってくる
昭和七年、“雲上の楽園”と称される四場浦鉱山の地下牢に監禁された男が、二十年後の脱獄と復讐を宣言する。そして予告の年、男は牢から忽然と消え去り、連続殺人事件が発生した。事件解明のため、眉目秀麗な探偵・荒城と、近未来的な義手を持つ真野原、弁護士の殿島が脱出トリックに挑む。
「『大冒険』シリーズ」第1作。
きたきたきたー!!
山口芳宏のデビュー作『雲上都市の大冒険』がとうとう文庫化です。レトロな雰囲気なのに古さを感じさせない世界観、奇矯な探偵たちに一風変わった舞台設定、魅力ある謎、突拍子もない大トリック――。まさに新本格の後継者・山口芳宏だからこそ書ける、勢いのある作品! ミステリ要素をさて置いても抜群に愉しいんだよなぁ、この人の小説は。
クライマックスの展開も派手派手しく、この『雲上都市の大冒険』~『100人館の殺人』までの同一世界観の物語(シリーズは跨ぎますが)をまとめて2クールくらいでアニメ化すれば、絶対に流行ると思う。このトリックは不可能だろ!!とかそんな理屈を余裕で捻じ伏せてしまう程のエンターテイメント性。講談社ノベルスから『機械島の殺人』が出るのか出ないのかという若干危うい雲行きの現状ですが、是非とも出して貰いたいところ。応援してます。
ライダーマンの如く用途に分けて義手を換装する変人・真野原と、白スーツに白帽子のキザな奴・荒城という二人探偵制にありながら、探偵としての技量に優劣をつけることなく進行するのは案外珍しい形式なのでは。真野原は祖父の代でもなかなか冷徹な思考の持ち主で馴染めそうにはないです。一方の荒城は人情味溢れるキャラクターで好きでした。
それにしてもまさかあの人まで命を落としてしまうとは……。ハン・ソロの言葉を借りるなら「おれは、みんなの周りに、安全なシールドを作り出したつもりだった。おれたちみんなの周りに。きみやおれ、チューイー、子供たち、ルーク、マラ、ランドの周りにもだ。あの馬鹿なドロイドたちさえ、その居心地のいいシールドのなかで、安全に、家族みたいに過ごせる、そう思っていた」
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