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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない BD/DVD限定版特典書き下ろし小説 あたしが兄貴に人生相談なんてするわけない / 堕天聖の追憶』

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★★★★☆
結局私には、せめて妹だけには幻滅されないよう……こんなことしかできないのだ。
あたしの顔は、真っ青だったに違いない。成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能、おまけに読者モデルとして雑誌に載ったりもする完璧超人なあたし・高坂桐乃には、誰にも言えない秘密があった……。そんなあたしの秘密が、ちょっとしたミスで、アイツ――京介に知られてしまった……。これは、あの日、あの場所、あの瞬間の、高坂桐乃の物語―――。(「あたしが兄貴に人生相談なんてするわけない」
闇の眷属たる“私”が、“此方の世界”の肉体へと移行したのは、春の匂いを色濃く残す五月のことだった。“女王”であり“騎士”でありそして“黒き獣”でもある私は、“此方の世界”において、何の変哲もない“人間”として日々の生活を営んでいた。“聖地”に降臨した私を待っていたのは、“熾天使”の様に輝ける少女と、どこかで見た顔の男。彼等は“堕天聖”である私の、“運命の相手”だった。これは、あの日、あの場所、あの瞬間の、黒猫の物語―――。(「堕天聖の追憶」


「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」番外編。
 アニメのBDとDVDの第1巻初回限定版に付属の20数ページ×2本の短編です。書き下ろしといっても新規のエピソードではなく、それぞれ原作1巻で描かれた一場面を別視点から捉えたマルチアングルストーリーとなっています。
 両短編共に一人称で語られる物語は、きりのんと黒猫、それぞれの心の内面――主に弱い部分を曝け出したものに仕上がっていて、決して賑やかしの内容ではありません。そこらへん、この『俺妹』が極めて真摯なドラマであることを示しており、ひと山いくらのライトノベルとは一線を画すところでもあります。すみません、完全にハマってますね。

「あたしが兄貴に人生相談なんてするわけない」
 第1巻冒頭のシーンから始まり、きりのんが『メルル』のDVDを玄関に落として京介に趣味がバレる部分、どうして冷戦状態の兄貴なんかに人生相談を持ち掛けようと思うに至ったのかを桐乃視点で紡ぎます。
 ここで改めてわかるのが桐乃がよくある定型的なツンデレとは異なり、兄貴に対して本当にイラつきを抱えているということ。それでも京介のひと言に、無意識のうちに“過去”に懐かしさを感じて決心する。小さい頃にあった“何か”がこの兄妹を決定的に決裂させる原因となっていたようで、それがこの作品の最後の核、なのかな?

「堕天聖の追憶」
 こちらは例のアキバオフ会を黒猫視点で見たお話。こうして読むと黒猫さんの一人称小説ぱねぇ。異化効果溢れる文章と妄想と現実がごちゃ混ぜになった状況説明が相当イタい子です。
 けれど、それは他者とのコミュニケーションが上手く取れない自分を何とか肯定しようという必死のもがきであり、弱さを覆い隠す仮面(マスケラ)であると。終盤、かなり痛烈な内容だっただけにラストの二文の爽やかさが胸に染み入りました。“予感”に振ったルビが素敵すぎる。


いや、これ。かなり良かったです。限定版特典にしておくのは惜しい。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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