2011.01/17 [Mon]
伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(3)』
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★★★☆☆
お、おばーちゃーん! どうしようっ、きょうちゃん、わたしと一緒にお風呂入りたいって!?
俺の妹・桐乃が、どうやら創作活動に目覚めたらしい。ところが、桐乃の書いた小説(ケータイ小説?)とやらは、同じく同人で小説を書いている黒猫にとって理解しがたいものらしく、案の定、口論になっちまった。その上、何を間違ったのか、桐乃が好き勝手書いたケータイ小説がネット上で話題を呼んで、出版社からオファーが来たっていうんだから、俺はただただ驚くしかない。というわけで、何事にも全力な桐乃が今回発動した“人生相談”によって、俺は、よりにもよって妹と、クリスマスの渋谷の街に繰り出す羽目になっちまった――!?って桐乃!さすがにその場所は兄妹で入っちゃマズイだろ。
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」第3作。
きりのん、ケータイ小説を書くの巻。それにかこつけて京介をクリスマスデートに駆り出し、クリスマスプレゼントまで買わせちゃってご満悦。そんな本心は微塵も表に出してこないけどね!
そんな憎たらしい桐乃でも体調が悪ければそれなりに殊勝なところもあって、京介の買ってきたヨーグルトを大人しく食べるあたりは素直で大変よろしい。いつもこのくらい大人しければ良いのに――と思ったら、実は当該ケータイ小説が盗作され、精神的にもかなり参っていたご様子。京介と黒猫は沙織のツテで問題の出版社にアポを取り、ことの真相を暴くために乗り込みます。
というわけで今巻は既刊2冊とは随分とカラーが異なる“小説家を目指す君たちへ”ちっくな内容。もともとヲタ関連のネタを大量に盛り込んでいること、読者層とそれに付随するライトノベル作家志望者の割合を考えるとあながち間違った方向性だとはいえないのですが、なんというか説教くさい。物語よりもメッセージの“伝えたい”度合いの方が前に出てきている感じがして若干萎えました。内田康夫『棄霊島』もそうだったけれど、作中人物の思考にあまりにも著者の影がちらついてくるとちょっと引いてしまう。
まぁ、それは置いといて。本作は各キャラクターたちの関係性を再認識、再構築した話だと思います。いままでなあなあにつるんでいた黒猫や沙織といった桐乃のネット友達と京介との関係を、きりのんを抜いたことできちんと対等な友人としてのポジションにまで引き上げました。さらに持ち込みのやりとりを通して黒猫のキャラを掘り下げ、京介が彼女の内面を知ったことで新たな人間関係が確立されてゆく。
京介が妹を嫌いだと述べていたその奥底には劣等感があり、高坂兄妹の上手くいかなくなった理由もそこだった――こういった人と人との繋がりを丁寧に描いてくれる作品は好きです。
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