2011.01/09 [Sun]
仁木悦子『林の中の家 仁木兄妹の事件簿』
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★★★★☆
そんなもの勉強しなくたって、女はたいてい生まれつき心理学者よ。
ことに恋人とだんなさまに関してはね。
シャボテン・マニアの豪邸で留守を預かることになった仁木兄妹。深夜の電話で呼び出された二人は、有名劇作家の自宅で起きた殺人事件に巻き込まれ――。緻密に張り巡らされた伏線と鮮やかな推理、マイペースな植物学者の兄と、好奇心旺盛な妹の凸凹コンビが醸しだすユーモラスな雰囲気が、絶妙にブレンドされた傑作長編ミステリ。
「仁木兄妹の事件簿」第2作。
シリーズ復刊3冊目にして装画担当のイラストレーターが変更になってしまいました。全作並べた際の統一性を考えると、あまり変えてほしくはなかったというのが本音です。それを除けば大満足。著者自身が本作『林の中の家』について語ったエッセイまで併録されており、単なる復刻版以上に価値ある本となっています。
個人的には既に刊行されている『私の大好きな探偵』『猫は知っていた』の2作よりも圧倒的に面白かった。推理部分のロジカルさが群を抜いていました。特に電話の謎と誘拐犯の正体についてのロジック構築が鮮やかで、解説でも触れられているとおり時代を経たことが良い具合に読者の先入観に作用し、発表当時よりもさらに難易度が上がっているのも興味深いところ。熟成されて深みが増した、って感じです。
伏線の張り方も非常に丁寧。しかもそれらの伏線は劇中の解決パートですべてが指摘されるわけではなく、読み終わってから思い返してみると「あれ、ここもじゃない?」と読者が自ら気付く余地が残されています。そのため、噛めば噛むほど美味しくなってくる。これはなかなか豪胆というか、度量がなければそうそうできることではありません。
ハイレベルでありつつも親しみやすい。「トリックよりロジック」派の人は迷わず買いです。
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