2011.01/04 [Tue]
アガサ・クリスティ『ビッグ4』
![]() | ビッグ4 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ・クリスティー 中村 妙子 早川書房 2004-03-16 売り上げランキング : 163740 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
まったくあの覚え書きときたら、私が衝動的だとか、
ある種の色の髪の女性に抗しがたい魅力を感じるらしいとか、くだらない情報ばかり並べたてて。
突然ポアロの家に倒れ込んできた英国情報部員は、うわの空で数字の4を書くばかり――国際犯罪組織〈ビッグ4〉と名探偵の対決はこうして幕を開けた。証人を抹殺し決して正体をあらわさない悪事の天才四人を追って、大陸へ渡ったポアロを恐るべき凶手が待ちかまえていた。
「エルキュール・ポアロ」第5作。
クリスティ史上最駄作と名高い、かの『ビッグ4』です。優雅に暮らすお金持ち宅で起こった殺人事件を論理的に推理する過程で、関係者たちを取り巻く人間関係も紐解いていくのが「ポアロ」の基本フォーマット。しかし本作は、そんなシリーズカラーから大きく逸脱し、ポアロとヘイスティングズが超国家規模の謎の巨大犯罪組織と対峙。間諜謀略の冒険活劇を見せてくれます。
世間一般でこの作品の評価が低い理由は短編→長編化に伴う違和感よりも、むしろこのカラーの違いが大きかったように思います。私はお気に入り海外ドラマ五指に『エイリアス』が入ってるくらいなので全然歓迎派。ビッグ4でもSD6でもどんと来い!
読書感想からは少し脱線しちゃいますけど、こうして見るとわが愛するドラマ『相棒』は明らかに「ポアロ」の潮流を汲んでますよね。振り幅の広さに過去作からの引用、登場キャラクターの自在性まで。いままでインタビューで名前が出てきたことはないですが。
今回の物語で嬉しいのはヘイスティングズの一時帰国。前作がアレだっただけに余計にそう感じます。ポアロの相方はやっぱり彼じゃないとね。相変わらず純粋で騙されやすい性格を惜しげもなく披露してくれますが、それがヘイスティングズの良いところ。ポアロの、大金を得たら南米に渡ってヘイスティングズの近くに落ち着こう云々には図らずも感動させられました。
前評判も何のその、全体として楽しく読めました。強いて難点を挙げるなら、ビッグ4ほどの大組織があまりにもあっさりと全壊してしまったこと。そして、スパイアクションの定石的展開とはいえ“解決”への過程で進んで死者を出してしまっていること。この二点のみ、いまいちしっくりこなかったです。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form