2010.12/22 [Wed]
仁木悦子『私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿』
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★★★☆☆
わたしのかいた図をおめにかけるから、「何だ、へただな。」なんて言わないで見てください。
のっぽでマイペースな植物学者の兄・雄太郎と、ぽっちゃりで好奇心旺盛な妹・悦子。推理マニアのふたりが行くところ、事件あり。どこかほのぼのとした雰囲気の漂う昭和を舞台に、知人宅で、近所で、旅先で、凸凹コンビの名推理が冴えわたる!
「仁木兄妹の事件簿」第1短編集。
ポプラ文庫版オリジナルの短編集で、収録作は「みどりの香炉」「黄色い花」「灰色の手袋」「赤い痕」「ただ一つの物語」の5本。「みどりの香炉」は書籍初収録だそうです。
短編なだけに謎解きの難度は低め。トリックや真相はわりと簡単にわかってしまうものばかりです。しかしながら第1作で見せた人間関係に対するドライな精神は健在。恨み辛みの積極感情ではない無関心的な冷たさが、各事件の関係者の心の中に見られます。動機もわざわざ語るに及ばないものが多く、その点についてはどうにもならないこととしてある程度割り切って書いている気がします。
それを和らげてくれるのが悦子による地の文。探偵小説の語り部の作法にのっとって、ある種メタ的な立ち位置からの“読者”を想定しての語りが可愛らしくてほんわかさせられます。悦子風に言うならチャーミング。
中学生悦子が特に良かったのですが、そんな彼女も最後の「ただ一つの物語」では二児の母に。時間の流れって残酷。でも、発表年順ではなく時系列順に編んでくれたのは嬉しい計らいでした。
欲を言えば、収録作も全短編のうち発表の早い順から最初の5本(かつ時系列順)でまとめてくれれば……。
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