2010.12/19 [Sun]
映画『オーケストラ!』
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★★★★☆
劇場清掃員として働くさえない中年男アンドレイ・フィリポフは、かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で主席を務めた天才指揮者だった。彼は、共産主義時代、“ユダヤ主義者と人民の敵”と称されたユダヤ系の演奏家たち全員の排斥を拒絶し、名声の絶頂期に解雇されたのだった。ある日、清掃中にアンドレイは、1枚のFAXを目にする。それは、演奏を取りやめたサンフランシスコ交響楽団の代わりに、パリのプレイエルに出演するオーケストラを2週間以内に見つけたいという内容。その瞬間、彼は、かつての仲間を集めて偽のオーケストラを結成、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込むことを思いつく。
(2009年 フランス)
レンタル版のパッケージに写っていた女の人があまりに美人でジャケ借りしてしまった作品(そして役名がアンヌ=マリー・ジャケだった。そういうカラクリ?)
ストーリーはかなりの“やりすぎ”です。名門ボリショイ宛てに届いた演奏依頼を勝手にくすねてかつてのボリショイメンバーによる成りすましを目論む――という時点で既にハチャメチャが押し寄せてくる~♪ なのですが、そんなものはまだまだ序の口。パスポートの手に入らないメンバーのために空港で偽造パスを配るわ、結婚式のエキストラのバイトではマフィアの銃撃戦に巻き込まれるわ、パリに着いたらリハそっちのけで皆観光に出かけるわでもう大わらわ。おまえら、自由か!!
元ボリショイの演奏者たちの多くは裕福とは掛け離れた生活を送っている人たちです。生きていくためのお金をつくるのに楽器を手放した者も少なくない。そんな彼らが苦しい“現在”から脱却するための手段がアンドレイの誘いに乗って憧れのパリに行くことでした。あのとき果たせなかった悲願をもう一度、というアンドレイの気持ちに同調していた仲間なんて殆どいません。パリに行ければ他はどうだって良いし、演奏に真面目に取り組もうという意思もさらさらない。あわよくば仕事を見つけ、そこに住んでしまおうとまで考えている。
そこでカギとなるのが世界的ソリストのアンヌ=マリー・ジャケ。彼女との共演はアンドレイのたっての希望でした。アンヌ=マリーもまた、伝説の指揮者アンドレイ・フィリポフと同じ舞台に立つことを望んでいる。しかし練習にも姿を現さないやる気ゼロの彼らに失望させられる。
公演を翌日に控え完全に決裂してしまったアンヌとアンドレイ、そしてボリショイの面々がひとつの“想い”を胸に最高の演奏に臨むために再び集まる場面には熱く込み上げてくるものがあります。どんなに落ちぶれたように見えても、決して裏切れない想いがある。自分のための演奏だったら平気で無視できた、でもこのコンサートは決して自分のためではなく――。
これ以上は言いません。後は自分の目と、耳で、感じたことがすべてです。
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