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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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佐久間誠『謎の未確認動物UMA――既存のUMAに対する概念が変わる科学的解説』

謎の未確認動物UMA―既存のUMAに対する概念が変わる科学的解説 (TOEN MOOK NO. 40)謎の未確認動物UMA―既存のUMAに対する概念が変わる科学的解説 (TOEN MOOK NO. 40)
佐久間 誠

桃園書房 2007-04-21
売り上げランキング : 32606

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★★★☆☆
世界各地にて目撃される未確認動物を紹介するだけでなく、食性・睡眠・生殖を基本とした目撃場所での環境分析を行い、特に湖(内水面・陸水)の科学や海の科学、水中に溶け込んでいる酸素量、動物種の分布という世界の科学共通のもので推測してみる必要性を実際に記述して納得できるように構成しています。もちろん、恐竜が鳥へ進化する際に1億年のDNA変化が必要だったなどの最先端科学も網羅しています。理系離れが進む中、楽しく理解・把握していただけるよう工夫しています。生命体として存在が可能なのか、存在しているとしたら軟体動物、脊椎動物、両生類?爬虫類?鳥類?など、本来の理系である科学 的観察・分析・考察・アプローチの仕方を専門用語をなるべく使わずに展開して、論より証拠のような解りやすさも心がけました。この科学解説をマスターされれば、これから貴方・貴女が見られるであろう生物を扱うTV番組や雑誌の記述 が正確なのかどうかも分かるようになると思っています。そんな判断がつくように、人生がロマンあふれるように一助にしていただくため、送り出した書籍です。


 UMAが好きです。私がこれまでの人生で買ったいちばん高価な本がUMAの図鑑で3990円なことからも、その好きさ加減が伝わるってものです。
 本書はUMA愛好家のネットユーザーなら知らぬ者はいない某巨大サイトの、いわゆるネット書籍です。ムックだけど。
 ぱっと見、表紙からして例の河童のミイラ(フィギュア持ってるw)やシー・サーペント、ビッグフットにホワイトリバー・モンスターの写真が使用されており、早くも信頼度はかなり低くなります。なぜなら、これらの写真はすべて贋物であることが判明しているから。そういったものを平気で使ってくるのは信用できない書籍です。文章もネット特有のノリをそのまま詰め込んだような感じでふざけているように映ります。

 ところが中身を開いてみると、これが結構まとも。不真面目の皮を被った真面目本。著者自身がプロの学者であり、“既存のUMAに対する概念が変わる科学的解説”と豪語するだけのことはあります。少なくともこれまで私の読んだUMA本ではレイクモンスター生存の条件で湖内の酸素量の問題について触れていたものはないし、目撃者の身辺状況“動機論”の部分から証言捏造を疑った書籍もない。新しいです。読んでみるだけの価値は充分にある。
 インターネットのホームページを基にしているため、一般人によるネス湖ライブカメラの写真や怪しい生物目撃談などのローカルな情報が手に入ることに強みがあります。ニューネッシーの写真もお馴染みの1枚だけではなく、目にしたことのないようなものまで載っている! 資料性は高いと思います。

 ただしネット書籍の弊害か、構成が壊滅的に悪い。前後のトピックに脈絡がなかったり、後述後述になっていっこうに内容が伝わり難かったり。青いザリガニや巨大魚の項はひとまとめにして後の方に載せれば良いと思うし、高野さんのくだりはコラム程度に留めておくべき。木星の衛星・エウロパの生命体の有無は完全にスレ(?)違いでしょう。『恐竜惑星』世代としてはそれはそれで惹かれないこともないのですが、結局結論はでないので「なんで載せたし」と心底思いました。
 本自体がひとつの流れを持っていないので読んでいて非常に疲れる。おまけに写真の画質が粗い上にモノクロでわかりづらい。判別不能。

 そして何より腹立たしかったのは巻末のUMAの捕まえ方のコーナー。私の愛読書であり、かの名著『空想生物の飼い方』と似て非なるこの章では、科学的見地に立ってとはいいつつ、かなりバカバカしい“可能性”を語っています。その中に「スカイフィッシュの場合」があるのですが、何を隠そうこの本、序盤の段階でスカイフィッシュの存在を否定する発言をしています。じゃあどうしてわざわざそんなものを挙げたのか、と。まぁそういう話になりますよね(ちなみに『特命リサーチ200X』でスカイフィッシュがいないことは立証されています)
 UMAに笑いは必要ない。著者がUMAを好きな気持ちは本当でしょう。ウモッカやネッシー談義で何時間も盛り上がれるくらい好きなのはわかります。しかしそれは私のベクトルとは違う。純粋に未知なる生物として興味があるというよりも、好きなお笑い芸人を語っているような印象を受けました。

 著者はこの本で、科学を使ってUMAを語っているのではなく、UMAを使って科学を説いているんです。感覚としては『空想科学読本』に近いです。UMAそのものへの正体解明に対してよりも、テレビ局のもっともらしい否定に対する反証に全力を注いでいるのもそのため。
 いちいち自画自賛気味に「この本ではいままでになかった考え方をしています! これを読めば見方が変わります!!」と主張してくるところもかなり萎えます。


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Comment

その通りですが一点だけ。 

お買い上げ有難うございます。
この本、ご存じのように出版社が倒産間際に叩き売ったもので、ちゃんと本向けの原稿はあったにもかかわらず、時間がなく作られました。私は倒産の話は前もって聞いておらず一銭もお金が入らなかった悲劇の本です。サイトで触れていますが、展開は、おっしゃられている正体をTV報道(特にTV朝日への働きかけ)で説明を出させたのが私でして、皆さんが知ってる大元です。サイトで書いた時点は「本物?」「なんだコレは」の段階であったものたちばかりですので、今は正体や捏造が分かってるものが偉そうに指摘しているのもその為です。でも、本当にひどい経験でした。写真の借用は驚くほど高額で、本当に報われない本でした。今だから話せるという不満ですが、思い出すと悲しいという気持ちもありながらも、13年前に一生懸命頑張ってたなぁと若かりし自分を懐かしく思います。
  • posted by さくだいおう(本人) 
  • URL 
  • 2011.07/18 12:22分 
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さくだいおうさん、コメントありがとうございます。
出版社は倒産寸前になるととにかく刊行点数を増やすと聞いたことがありますが、そういった経緯で出来上がった本だったんですね。酷い話ですが合点がいきました。

私はこの本の着眼点が独特なところを気に入っています。UMA本は書く人が限られているため、それだけ発想も固定されてしまうんですよね。いつか書籍用に整えられたより精度の高い原稿で、改めてさくだいおうさんの著書を読んでみたいものです。
  • posted by はろーすみす 
  • URL 
  • 2011.07/18 21:56分 
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レス遅くなりました。 

すみません、お返事を頂いているにも拘らず大変遅れてしまいました。
仰られるように最初は立派な本の企画だったはずで原稿も作り直していたのにどこへ行ってしまったのか、微妙な経験になりましたが、実はまだありまして、No.2が出来る予定が資料や画像やパスポートと共に音信不通に(大手出版社でした)。
人事異動だったのでしょうが、資料も紛失で諦めざるを得ませんでした。サイトの下部にツチノコとか色々と一部だけ置きました。
その原稿は魚に切り替わって釣り連載誌で使えたので何とか救いでした。声を大にして言いたかったのですが、所詮ウェブ本という走りで編集者さんも不慣れだったんでしょうね。
  • posted by さくだいおう 
  • URL 
  • 2011.12/16 12:56分 
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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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