2010.12/05 [Sun]
堀川アサコ『魔所 イタコ千歳のあやかし事件帖2』
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★★★☆☆
おかげさまで、昔私が選ばなかった暮らしが出来ました
「薫物御前は、良くねえ女だった。俺が見た訳じゃねえよ。もっと昔の話だ」――昭和初期の青森、魔女伝説が残る場所“薫物様”で、次々と起こる怪事件。相談を受けたイタコの千歳は、悲劇の連鎖を止めることができるのか? 超常現象をごく論理的に解釈する千歳と、おばけ嫌いなのになぜか霊の声を聞いてしまう助手の幸代が巻き込まれる猟奇的難事件の数々。怖さ、切なさ、大増量のオカルティック・ミステリ。
「イタコ千歳のあやかし事件帖」第2作。
わかっていたけど表紙の幸代さんがそれなりに年齢重ねていてちょっとショックだった orz
前作よりも俄然怪談・ホラー色が増しての全4編です。その根底に流れるのは愛憎と狂気、人間の情と欲。
中でも「白い虫」はマジで怖いです。人間は足の多い生き物に恐怖を覚えるか足のない生き物を苦手とするかの2タイプに分かれると聞いたことがあるけれど、私は後者のタイプです。心の奥で息を潜めている"細長いうにょうにょ"に対する生理的嫌悪感がこれでもかというほどに呼び醒まされました。ひいいいぃぃぃぃっ!!
この「白い虫」は千歳の実家・大柳家の使用人シエの子供時代の体験を綴るエピソードで、漢方薬だかおまじないと称して寄生虫じみた謎の虫を飲まされるだけでも充分に恐怖なのに、それを無理矢理にでも飲ませようとする栄子の尋常でない様子、不透明な池の中で蠢く何か、授業中の生徒の口から突然吐き出される虫……鳥肌が立つほど不気味です。小学生の頃に読んだ怪談マンガ以来ですよ、こんなに寒気がするのは。
シエの記憶が、現在の栄子のひと言でまったく別の風景に変えてみせるあたりの手腕もお見事。この話に限っては千歳がまったく登場しないため、作品世界の広がり、新たな可能性も垣間見えます。
かと思えば「魔所」では物語自体にあるトリックが仕掛けられていてミステリ的な意外性もまだまだ捨てていません。エピローグでの薫物御前の不穏な登場といい、続刊への期待がますます膨らむところ。
しかしあんなに美少女な千歳の亡くなった旦那さんがゴリラ似だったとは……。
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