2010.11/28 [Sun]
初野晴『空想オルガン』
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★★★☆☆
つまずいたっていいじゃない。上に向かってつまずけば高く飛べるかもしれないじゃない。
手足をじたばたすれば、もっともっと飛べるかもしれないじゃない。
吹奏楽の“甲子園”普門館を目指すハルタとチカ。ついに吹奏楽コンクール地区大会が始まった。だが、二人の前に難題がふりかかる。会場で出会った稀少犬の持ち主をめぐる暗号、ハルタの新居候補のアパートにまつわる幽霊の謎、県大会で遭遇したライバル女子校の秘密、そして不思議なオルガンリサイタル……。容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?
「“ハルチカ”シリーズ」 第3作。
あらすじのチカの紹介がチカ本人による改竄のようにしか見えない罠。天然少女じゃなくて爆弾娘の間違いっしょ。
初野晴のこのシリーズ、単行本は買わない主義の私が唯一集めていたハードカバーものだったのですが、前作『初恋ソムリエ』の出来があんまりだったこともあって今回は購入見送り。図書館で借りてきました。いざ読んでみると内容的には盛り返していて面白かったので素直に買っておけば良かった、と後悔しています。来年4作目が出たときに一緒に揃えるかなー
全4編からなる本作のお気に入りは「ヴァナキュラー・モダニズム」。シリーズ全短編の中では1作目『退出ゲーム』所収の「退出ゲーム」に次いで本格度の高いミステリになっています。パズルゲームのようなアイディア満点の謎と少し重たい人間模様、本シリーズのウリである二本柱を十二分に堪能できます。勿論、恒例のぶっ飛んだゲストキャラも健在。今回はハルタの姉の南風さん。すごいインパクトです。上条家疲れそう……。
「ジャバウォックの鑑札」は高級犬の飼い主当てが主題。迷い犬の飼い主と名乗り出たふたりの人間のうちどちらが本物かを推理します。でもこれ、ドッグタグの暗号解読のために出てくる小説のタイトルはあの段階では特定できないような。それまでの会話だと単純に“長くて覚えづらい名前”としか言ってませんでしたよね? いくらなんでもムリがある。どうも初野さんは謎解きの見せ方がスマートでない気がします。
最後の話のタネは早くから見当がついちゃいました。でもここでのメイントリックは“あの人”ではなく“あの娘”の事情についてです。それが全編通して仕掛けられていた謎。これには完敗、まったく気付きませんでした。
しかし『ガンバ』とか『ドラゴンボール』とかアニメネタが豊富なのは時流なんでしょうか。最近のヲタ向けアニメとかも鑑みて。大量のトラウマを生み出したことで有名なノロイも、原作しか読んでいない私にはただのイタチに過ぎないですけどね!
全体としてはほぼ満足だったのですが、強いていえばコンクールの演奏シーン全カットが残念でした。あそこまで主軸に据えておいてそれは酷い。みんなそこに向けて頑張ってきたんだから、ミステリ抜きにしてもちゃんと見せてほしかったです。一応それについては「序奏」でチカが弁明はしているのだけれど、生殺しにもほどがある……。
次作では卒業した片桐部長とナナコが付き合ってるに60票!!
(片桐先輩をカマキリ先輩と変換してしまうのははやみねファンの性なのか)
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NoTitle
最後にはまだ終わりじゃないんだという希望がわかり、また次に期待しています。
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