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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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映画『ボーダータウン 報道されない殺人者』

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★★★★☆
殺された女性の数は375じゃない。あれは警察の公式発表の数。
実際の数は5000に近いハズだ。

シカゴの新聞社で働く記者ローレンはある日、上司から、アメリカ・メキシコ国境の町・フアレスで10数年に渡り起きている連続女性殺害事件の取材を命じられる。フアレスに着いた彼女は、かつて仕事を共にしていたディアスが経営する新聞社、エル・ソロ社を訪ねた。当局の圧力から、なかなか真実を報道できないメキシコで、エル・ソロ社は弾圧に負けない内容の新聞を発行し続けていたのだ。早速ディアスに協力を頼み込むローレン。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、汚職にまみれた警察や政治家の支配の下、真実は闇に葬られるという社会であった……。 (2006年 アメリカ)


日本公開は2008年。
 題材があまりにもデリケートで“探っちゃいけない”部分だったため、撮影中に数々の脅迫行為を受けたという問題の作品。特典映像では監督が、玄関先などに女性の象徴である白い鳩の首を掻っ切った死体が置かれたことが幾度かあったと語っており、そのヤバさが窺えます。それでも途中で頓挫せずに公開まで漕ぎつけた製作陣には、よくぞやってくれた!と拍手を贈りたいです。
 『ブラッド・ダイヤモンド』にしろ『闇の子供たち』にしろ、こういった問題提起系の映画はもっと大勢の人間に観られても良いと思うし、また観られるべきだとも思う。俳優名には疎い私でも知っているような大物をせっかく起用しているんだもの。出演者で観てみるのもアリではないでしょうか。
 その上でやっぱりダイヤは欲しいよね、とか自分の子供が助かるならその臓器のために犠牲になる人がいても構わない、と感じるのは自由。誰も咎めません。私だってそんな偽善者ではない。でも、まずは「知って」からですよね。

(以下、ネタバレあり?)


 本作はフアレスで10年以上の長いスパンで起こっている膨大な数のレイプ殺人と、それを黙認し続ける社会の現状を描いた映画です。作中のセリフによると被害者は既に5000人超ということですが、一見途方もないフィクション的に誇張された数字に見えるこの被害者数も実はそこまで意外でもなかったりします。
 前提として殺人者は1人ではありません。フアレスの治安は最悪。女の人が夜間に外を歩いているだけでも普通に殺されてもおかしくない場所です。レイプ殺人を敢行したところで警察もまともに捜査をしないことは周知。
 しかも同一人物も常習的に犯行を繰り返す。現に、映画冒頭でレイプから生還したエバを襲った輩は、まったく同じ手段でローレンにも襲い掛かります。

彼らが月に2回、犯行を犯すると、犯人1人における1年の被害者数は 2回×12ヵ月=24人
さらにそれが10年以上に渡るので 24人×(10+X)年=(240+24X)人≒250人超
この1人についての被害者数を総被害者数から割って 総被害者5000人÷250人=20人(犯人数)


20人。
……このくらいは余裕でいますよ。
映像から受けるフアレスの様子からしたら、もっといても全然おかしくない。
5000人という数があながちリアリティのない数字でもないことが充分にわかります。

 これだけの命が犠牲になっているにも関わらず、対策するのと無法のまま、コスト的にはどちらが多く掛かるのかといった判断基準でそ知らぬふりを決め込む。そればかりか、国の信頼に関わるからと真相を究明しようとする人々を容赦なく消そうとしてくる。これはもう腐っているという言葉が生易しくすら感じられます。

 そして、そんな体制が主人公ひとりの努力でなんとかなるわけは当然なく。このタイプの社会派映画は根本的な解決にまで持っていけることがまずあり得ないので、物語として完結させるのは非常に難しいのですけど、その点で本作は全編通してのエバとの交流を通じてローレンの心境変化とそれに伴う決心で終わらせているので違和感はありません。あの出世志向でいけ好かなかったローレンがこうまで変わるか、と。そこに至るまでの説得力を自然な物語の中で持たせ、きちんと見せてくれたことも良かったです。オススメ。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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