2010.11/06 [Sat]
映画『サマータイムマシン・ブルース』
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★★★★☆
時間はね、君らが思っている以上にシビアなんだよ
真夏にクーラーのリモコンが壊れたSF研究会の部室。そんなところへ本物のタイムマシンが偶然にも現れた。とりあえず「昨日に戻ってリモコンを取ってこよう」ということになり、乗り込んでみるのだが、軽い気持ちで実行したそれは過去を変える危険な行為であり、そのせいで全てが消滅する恐れが! 時間の矛盾を元に戻すための大冒険がスタートする! (2005年 日本)
以前、レオさんに紹介して頂いた作品です。それが既に4ヶ月も前のことで本当にすみません orz
私は基本的にお笑い番組やコメディ映画は見ない人間なので、初っ端からテンション振り切った独特なノリと溢れ出るチープさにまったく楽しさを感じられず、これはムリかなー と思っていたのですが、扇風機のくだりで思わず「ハロゲンヒ-ターじゃん!!」と突っ込みを入れてしまったあたりから、見事にヤツらに絡め取られましたね。シルバニアを動かしちゃうあたりではもはや爆笑ですよ。
それでこの作品、リモコンの故障ひとつに対する124年に渡る壮大な辻褄合わせという、大きいんだか小さいんだかよくわからない規模の物語が展開されます。過去を変えたら現在に繋がる道が経たれ、すべての存在が消滅してしまう可能性を指摘され、SF研の連中はそれを阻止するために奮闘します。
まぁこの物語における時間は“過去への介入を折り込んでの一本道”だったので、どの行動も為されるべくして為された必然性の上に成り立っている。杞憂っちゃ杞憂だけれども、その勘違いすら大きな時間流の中に設定されていたとも考えられそうです。
わりと時間のルールがしっかりした作品なのに、映画館館長のコスプレが時間の扱いに統一性のない「スタートレック」なのはアイロニー(?)。あのタイプは『新スタートレック』初期の制服ですね。
(以下、ネタバレあり)
そうはいっても劇中で保積が述べていたように、影響を受けない時間の流れがある一方で、辻褄さえ合えばある程度の改変も可能なのが本作の世界観。今回の場合、“クーラーのリモコン”が“壊れた”その2点を事実として押さえたことにより、本来ならば壊れていたハズのリモコンを壊さずに済むことに成功しています。複雑で不思議な話ですけど、上手くやれば何とかなっちゃうんです。世間の評価に惑わされて時間軸を乱立させた挙句、最終的に全面放置する醜態を晒した「ターミネーター」シリーズのスタッフにはこれを見て見習って欲しいわ。
ここまで書けばもうおわかりのことと思いますが、ラストで未来の失恋が確定してしまった甲本。彼が春華と破局を迎えずに済む解決法も実は残されています。苗字を変える必要もありません。要するに、“田村と名乗る男”が“未来からやってきた”事実が確かであれば良いのだから、甲本は自分の息子がタイムワープした際に“田村”と名乗らせると早い段階で心に決めておくか、宣言をしておけば良いのです。「田村君が偽名を使ってた」説を事実として作り上げれば、“田村と名乗る男”が“未来からやってきた”事象に何ら反しないので、全然OKというわけ。や、そうなると何がブルースだ、って話ですけど……。
ところで。あのシーンがこう繋がるのかといった見せ方も醍醐味のひとつであるこの手の作品ですが、その点においてこの映画ではあまり驚きは得られませんでした。ミステリでもそうですけど伏線は気付かせないようにさらりと張るからこそ「おおっ!」となるもの。本作ではまだ実行していないタイムスリップの結果として妙な誤解が生まれているだろうことは容易に想像がつき、一度目の“昨日”では過去に遡った彼らを中途半端に隠していたり、と初めから違和感を植え付け→納得の流れになっているからです。そういった爽快感では、伏線回収の仕方で『デジャヴ』が、サプライズ度合いでは『リターナー』が圧倒的。
ただし、この『サマータイムマシン・ブルース』は青春の爽快感に満ち満ちていました。ちょっと暑苦しいくらいに。
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確かにチープと言えばチープですね。私は登場人物や時代背景に共感できませんでした。
ただ、くだらないことに一心不乱になれる様は清々しいです。(まぁ、現代でリモコンは死活問題とも言えますが)
映画や小説の評価はとても参考にして楽しませてもらってます。マイペースに頑張って下さい。
長々と失礼致しました。