2010.11/01 [Mon]
映画『アイランド』
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★★★★☆
2019年、リンカーンは大気汚染から救いだされ、完璧に管理された味気ない都市空間のコミュニティで暮らしている。安全で快適だけれど、退屈な日々。唯一楽しみは女性の居住棟で暮らすジョーダンとの心はずむ会話だけ……。ここで暮らす人々の夢は、地上最高の楽園「アイランド」へ行くこと、ときどき行われる抽選会が彼らの最大の関心事だ。しかしリンカーンはある日ふとしたことから、この都市空間の恐るべき真実を知ってしまう。逃げることだけが生き延びる手段と知った彼はジョーダンとともに決死の脱出に挑む! (2005年 アメリカ)
はい、こちらも地上波放映にて視聴。
エンタメアクション映画の皮を被ってはいますが、クローン産業の是非を問うなかなかハードなSF映画でした。代理出産や万が一事故や病気になった際の“保険”として生産・管理されるクローン人間たち。そこに自我が存在した場合、ただの“道具”である彼らの存在をどう受け止めれば良いのか、それがわかっていてなお、彼らを殺してオリジナルを生かす意味はあるのか? 『スタートレック エンタープライズ』の名編、第62話「ライサリア砂漠幼虫」(レンタル版のベストエピソードセレクションに収録!)でも議論された究極の問題です。
本作はクローンに視点を置いているので必然、クローンの人格を無視した企業側のやり口が残忍で非情なものに見えてきます。しかし、ふたりの逃亡を手伝ったエンジニア(?)や、ジョーダンの心の底からの涙に絆された“彼”など、クローンを受け入れ、同じ人間として受け入れてくれる存在もいます。
彼らの温かみは人間の良いところであり、一見すると非人間的な冷徹さを持つ博士やオリジナルも、それはそれで人間らしい。クローンの中にだって大統領のクローンのようにいけ好かない奴もいる。線引きなんて最初からできないのかもしれません。
ところで、自分たちが汚染後の地球に住んでいると思い込まされ、何の疑いを持つことなく新たなるクローン人間製造のための労働力として使われる作中のこのシステムは、完全に完成されたレベルにあると思います。
先日、読了のギルバート・アデア『閉じた本』での話を引き合いに出すと、英語をまったく知らない人たちを教室に集め、教える側が適当にこしらえた“言語のようなもの”(たとえば「りんご」を英語では「ぴちょん」と発音しますよー とか)をさも本物のようにレクチャーしていくことで数ヶ月の講座が終わる頃には受講生たちはこの世に存在しない言葉を“英語”であると信じて自在に操り、会話できるようになる――というアレ。
たとえそれがまったくの嘘偽りであっても、受ける側に真実を判断するだけの材料と機会が与えられていなければ、箱庭の中ではそれが“事実”として認識されてしまう。そういう意味では、非常に怖い作品でもありました。
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