2010.10/08 [Fri]
谷原秋桜子『天使が開けた密室』
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★★★☆☆
それは、そうかもしれませんけど……でも気持ちだけは、きっと伝わるはずだと思ったから
行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。そのバイト先で高額の借金を負うハメになり困惑していたところ、「寝ているだけで一晩五千円」というバイトが舞い込んだ。喜び勇んで引き受けたら殺人事件に巻き込まれて……。怖がりだけど、一途で健気な美波が奮闘する。期待のシリーズ第一弾! 短編「たった、二十九分の誘拐」も収録。
「激アルバイター・美波の事件簿」第1作。
2001年に富士見ミステリー文庫から発売されたライトノベルの新装版です。純正のラノベは殆ど読まないといいつつ、こういう移植されたものとか境界線ぎりぎりな作品は結構読んでいる私。基本、キャラミスが好きなので。
険悪ながらも気になるアイツと、江戸っ子気質の陸上美少女に名家のお嬢様というふたりの親友。基本的なノリは、ひと昔というよりふた昔ほど前の少女マンガみたい。『ママレードボーイ』の世代より『ときめきトゥナイト』世代寄りですね、雰囲気は。
美波の気は強いんだけど泣き虫な性格も、見ていて若干イラつく感じが少女マンガのヒロインっぽくて良い。やっぱり少女マンガの主人公といったら、頑張り屋だけど周りが見えなくなることもしばしばで、少しKYなところがあるのが王道だよね。そんな懐かしい空気を存分に味わいつつ、読了しました。
メインとなる「天使が開けた密室」は解説でも指摘されているとおり、なんといってもタイトルが秀逸。一旦すべて読み終えた後で改めてプロローグを紐解いてみて、その明かされた心境にちょっと感動しました。これ以上にぴったりなタイトルは他に考えられません。何気にミスリードも効かせているし、この短い言葉によくぞここまでの意味合いを詰め込んだものです。もうそれだけで大満足。
続く短編ですけど、下手したらこちらの方が出来が良かったかもしれない。誘拐事件と犯人の要求もなかなかお目に掛かれないようなトリッキーなもので、短編の中にキレイに伏線も収まっておりこれは面白い日常の謎ミステリ(やや逸脱?)でした。
そうそう。これもイラストがミギーさんでした。
富士見ミステリー版は『GIRLSブラボー』のまりお金田だったらしく、それはそれで見てみたかったかも。
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