2010.09/29 [Wed]
重松清 編著『百年読書会』
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★★★★☆
本を閉じたあともなんとも落ち着かず、胸の奥に一言ではうまく言えないものが残るからこそ、
そしてそれは十人十色だからこそ、僕たちは読後に誰かと感想を語り合いたくなるのかもしれません。
直木賞受賞作家の重松清が時代を超えて読み継がれる12の名作を選び、全国の読者が朝日新聞紙上で感想文を寄せあった。子どもと感想を競うお母さん、遠距離介護をしながら名作を読んだ人など、参加者は12歳から97歳まで、投稿総数は1万2814通におよんだ。『坊っちゃん』『斜陽』『あ・うん』『砂の器』などを身近な者たち同士で読みあい、見知らぬ人たちの間で感想を伝え合った、大読書会の記録が1冊に。
重松清が毎月課題図書を設定し、読者がその作品を読んで書評を投稿する。思えば「百年読書会」は面白い企画でした。やろうやろうと考えていたものの、結局投稿することはなかったこのコーナー。終わってみれば、名作・文学小説を殆ど読まない私は、既読作品が宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と夏目漱石『坊っちゃん』の2つのみで、紹介された本は殆どが触れたことないものばかりだったのですが、それでもこの読書会は毎週楽しみにしていました。
本書で紹介されているものでは深沢七郎『楢山節考』あたりは読んでおきたいですね。人生の課題図書に加えておこう。
インターネットが普及した昨今では、他人の感想は Amazon のレビューなり、ブクログなり、読書メーターなりで簡単にチェックすることが可能になりました。しかし、そういったことに明るくない世代の方も感想を多く寄せているので、一概にこうしてネットで目にする意見で代替できるとは言い難い。たとえば本書で紹介される98歳の“常連さん”の見方など、ひと味もふた味も違う深みが違うわけですよ。
また、一方通行で終わる個人の“感想”とは異なり、実際に寄せられた多数の書評たちを重松清自らが選定、解体し再構築させ、多角的な視点を持ったひとつの書評として纏め上げられたことは、かなり大きいです。流れが綺麗なので非常に読みやすく、よくわかる。対象作品を読んでなくてもよくわかります(読め
興味深かったのは向田邦子『あ・うん』の項。いつも思うのですが、男の人から見てカッコ良いと感じる“男”と女の人が惹かれる“男”って、どうにも食い違いがあるような気がします。
少女マンガ『僕等がいた』に矢野と竹内というふたりの男子が出てくるのですけど、ヒロインの高橋は矢野のことが好きなんですよ。で、矢野も高橋が好きになって付き合うのだけど、この矢野がね、傍から見てると最悪なくらい自己中で自分勝手。色々複雑な事情を抱えてるのはわかる。でも、だからといってそれが矢野の行動を肯定することにはならないし、高橋を傷つけるのがわかっててもそういう行動を取るのは納得できない。
で、一方の竹内は本当に良い人で優しいんですよ、これが。誰がどう考えたって高橋は竹内を選ぶべきだと思うじゃないですか。ですが、竹内派は圧倒的に男の人が多く、女の人に訊くと決まって矢野の方が好きと答える不思議。
――まあ。だから何だ、って話なんですけど、そうやって同じ作品を読んでもまったく相容れない意見を持つ人がいて。それをぶつけ合うことで自分だけでは到達できなかった解釈と出逢い、視野が広がっていく。それこそ、「読書会」の意義であり、最大の魅力なのではないでしょうか。お、上手くまとまった?
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