2010.09/28 [Tue]
青柳碧人『浜村渚の計算ノート 2さつめ ふしぎの国の期末テスト』
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★★★★☆
僕たちがやっているのは、余計な者の排除と簡素化、いわば、微分だよ。
数学テロリスト“黒い三角定規”の犯行はとどまるところを知らず、数学に関係したいろいろな怪事件が続く。警察もお手上げの謎解きに、数学少女・浜村渚が再び助っ人として大抜擢の大活躍。ついにテロ集団の幹部に迫るが、渚の数学好きを評価され勧誘されてしまう……。
「浜村渚の計算ノート」第2作。
『浜村渚の計算ノート』の続編がまさかの刊行! このまま終わらせるには惜しいと思っていた前作ですが、よもやBirthでシリーズ化があるとは。講談社Birthというレーベルはたぶん、現在最も作家デビューしやすい新人賞だと思うのですが、それだけに地雷臭もかなりします。作品が、ということではなくデビュー後のフォロー的な意味で。新人を大量に発掘するのは良いのだけど、だからこそそのままで放置される作家も大量に出てくると思う。現に、Birthで2作以上出しているのは青柳碧人ただひとりだったりするんですよねー
そんな今巻、読んでみてびっくりしました。“1さつめ”よりも格段に質が高くなっています。前巻の感想が「面白い」だとしたら、今回は「すごい」。ミステリと数学が有機的に結びつき、お互いを引き立てせていて、レベルが違う。
第3章「わりきれなかった男」の出来なんか感動しました。物語そのものも良い話だったのですが、注目すべきはその構造。“黒い三角定規”からの脱走を試みた青年らが逃亡中に殺される。ただ1人生き残った男が逮捕され、裁判が開かれるものの彼は無実を主張。証拠も容疑者の主張を裏付けている。果たして真実は?というものなのですが、ここで渚は証拠品からひとつの計算式を組み立て、それを解くことによって見事に真相を明示してみせます。これが、伏線をしっかりと拾っていけば誰もが辿り着ける計算式であり、計算さえできれば自ずと事件の答えがわかるという仕組みになっています。これぞ本格ミステリ!
第2章で犯人を落とした決定打もかなり意外性のある、それでいて実にこの作品らしいもの。これも伏線が冴えています。法律的にどうなのか問題になりそうなものですが、数字に正直な数学テロリストを納得させられれば勝ちという“世界観”にある以上、これが最も効く手段なのです。
“未定義の顔、だよね?”や“涙の積分が、怒りに収束しちゃったよ”などのお得意の数学的言い回しも炸裂して、笑える笑える。このまま唯一無二・本邦初の数学ミステリ作家としての地位を確立してほしいものです。3さつめも超期待! 青い鳥文庫あたりでも出して!!
それはそうと、「不思議の国のなぎさ」で渚が武藤さんに言った“ゆっくり、考えてみてください”の結論がわからないままなんですけど……。何らかの時間差トリック的なものが仕掛けられていたのだろうけど、何をどう計算すれば良いのかがわからない。頭悪くてすみません。ギブ。誰か教えて。神様Rescue me!!
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