2010.09/05 [Sun]
マンガ総評:かかし朝浩『暴れん坊少納言』
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時代はAD.994、平安京。橘則光は親の言いつけで、お見合いをすることに。気の進まない見合い相手は、なんと貴族の娘とは思えないハチャメチャな暴れっぷりを示す、菅原諾子(後の清少納言)だった! 諾子の機転と行動力が評価され、宮廷に招かれることとなるが、そこでも諾子は宮中に大混乱を巻き起こす! 天才エッセイスト・清少納言をオリジナリティー溢れる解釈で描く入魂作・待望のコミックス化!! 全7巻。
超絶久し振りの「マンガ総評」です。本当は『初恋限定。』とか『ひとひら』とか完結した作品の感想はアップしていきたいのだけど、なかなか筆(?)が進まなくて……。
この『暴れん坊少納言』はマイナーもマイナーで、普通の書店ではまずお目に掛からないレアなマンガです。しかしこれが面白い。何度読んでも面白い。マンガジャンルのマイベスト10圏内に相当することはまず間違いないくらいにこのマンガ、好きです。
歴史上の人物を主人公に据えたマンガは世の中に結構氾濫していて、昨今ではさほど珍しくはありません。オビにも“いとツンデレなり”みたいなことが書かれていて、第一印象は「ああ、そういう狙ってる感丸出しの萌えマンガね」といった感じなのですが、それが大きな間違いであることにすぐに気付かされます。
この作品、古典文学と平安時代に対する極限の愛とリスペクトを持って描かれた傑作です。各話のタイトルが五・七・五調で統一されているのも文学に真剣に向き合っていることが計り知れ、好印象。勿論、それでいて崩すところはとことん崩す。“待ちなさい 月に代わって(以下省略)”とか、このセンス最高すぎるw
それぞれのエピソードも、『枕草紙』や『紫式部日記』『源氏物語』などの後世に“残っている”古典作品の内容とリンクさせて進んでいくのが良いです。しかもマンガを描くに当たってフィクションとして改変した部分も単行本のおまけマンガで史実との違いを丁寧に説明してくれる親切設計。
全国の中学校高校の古文の授業で紹介しても良いと思うんだ、普通に。
『源氏物語』なんかを読んでみると1000年以上の昔の平安時代も、実は人間の考え方とかやってることとか、びっくりするほどほどいまと変わらないんですよね。「帚木」における女性談義の内容を学校の授業ではじめて聞かされた際は衝撃でした。だってあの人たち「KYな女の人はやっぱりダメだよねー」みたいなことを語らってるんですよ。
だからこの作品で描かれる清少納言とその仲間たちの物語もまったくのフィクションではなくて、その生き生きとしたやりとりを読んで本当にこんな感じでわいわいやってたんだろうな、と想いを馳せてみたりして。それこそ、清少納言の言う風流なんですよね。
終わり方も移り行く時代の流れと、清少納言っぽさの両方が見事に表現されていていとをかし。
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