2010.08/27 [Fri]
映画『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』
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★★★★☆
ふざけるなよ。 “仮面ライダー”はこの街の希望だ。
戦争屋なんかが名乗って良い名前じゃねぇ !!
風都に突然ばらまかれた“A~Z”、26個の次世代ガイアメモリ。そして突如現れた、凶悪な犯罪者たち。彼らの正体は、いったい何者なのか。一方、フィリップはマリアという謎めいた女性に、母の面影を見る。風都を、そして仮面ライダーを襲う最大の危機。恐るべき敵の野望から、Wは、アクセルは、風都の人々を救うことができるのだろうか!? 巨大な陰謀が渦巻く中、衝撃の事実が次々と明かされる。絶体絶命のピンチに陥った翔太郎に、逆転への切り札はあるのか? 人々の祈りを胸に、熱い友情の絆を武器に、「二人で一人」の仮面ライダーが風を切る!! (2010年 日本)
『仮面ライダーW』劇場版。
これは熱い! カッコ良い! 脚本も完璧!!
セリフの端から端まですべてが名言で、平成ライダーの劇場版ではトップクラスの出来映え。私の中のベストはエンドロールの“アレ”にまんまと騙された『鬼ヶ島の戦艦』だったのですが、あちらはジュブナイル映画なので如何せん“燃え”は足りません。そういう意味では正統派のヒーロー映画として平成ライダー中トップなのは、この『AtoZ/運命のガイアメモリ』の方でしょうね。
時系列的にはテレビシリーズの第44話と第45話の間のエピソードとなる本作。この配置が意外とキモで、平成ライダーの劇場版はテキトー設定で結局パラレルというのが通例になりつつあるのですが、今回はすごいですよ。シュラウドの正体がフィリップの母親と割れ、フィリップが死人であることはまだ判明しておらず、亜樹子と照井はらぶらぶしている。まさしくテレビ版のこの位置でしか成立し得ない物語で、作品自体の割と根幹の部分にまで言及しているにも関わらず破綻をきたさず後のエピソードに繋げています。
それどころか、きちんとしたタイミングで観賞すると本作自体が第45話で明かされるフィリップ死亡の伏線として機能してみせ、俯瞰したつくりとしても言うことなし。
大道の言う“兄弟”“怪物”“データ人間”の意をフィリップが誤解したままで話を上手く運んでいるのが妙ですねー。
T2ジョーカーメモリの行方も相当驚かせてくれます。さすがは探偵モノ。冒頭から気付かれないような伏線が張られていたことには感心させられました。伏線で魅せるミステリは大好きです。古野まほろ『探偵小説のためのインヴェンション』とか『相棒』の「殺人晩餐会」……etc.
ジョーカーの名に相応しく、最後まで見つからなかったJのメモリ。絶対絶命のあの場面で見つかるからこそ“切り札”であり、それを引き寄せるだけの力を持った男こそが左翔太郎。どこも特別ではないけれど、街を愛する心と仲間を想う気持ちだけは誰にも負けない。
それにしてもメモリが適応者を選ぶという設定がこれほどまでに熱いとは。そしてクイーンとエリザベスの件にはしっかりと笑わせて貰いました。
で、そのT2ジョーカーを使って翔太郎が単独で変身する仮面ライダージョーカーがまた魅力的。マキシマムドライブが“ライダーキック”に“ライダーパンチ”、黒一色のデザインといい、かなりスマートでシンプルな印象です。勿論、ダブルも活躍――というか、この映画のバトルシーンって従来作に比べて相当力が入っているのではないかと。ルナドーパントが創り出した幻影マスカレイドとダブルのバイクアクションに痺れます! これが本当に本当のライダー映画か!!
NEVER組はどの人物も魅力的でした。エターナルこと大道克己の挙動も単なる悪役とは異なる、大道なりの考え方と葛藤が見え隠れしていて良かった。
ルナの京水のオカマキャラも前情報の段階では安直かなぁと思っていたのですが、須藤元気……嫌いじゃないわ!(これが言いたかっただけ
このセリフとキャラクターは後々の特撮ファンの間での定番ネタとして残っていくことはまず間違いないですね。ほんと、本来の台本から変えてこんな愛されキャラを創出した須藤元気の功績は偉大ですね。
ところで。『仮面ライダーW』における“仮面ライダー”とは「風都」の街を守る正義の戦士を指します。だから翔太郎はエターナルが仮面ライダーを名乗ったことに憤りを感じました。
逆に、たとえライダーに変身できなくなったとしても街を守りたいという心を持って戦いに臨む照井は間違いなく“仮面ライダー”なわけです。この作品ではそういう流れを、1年間掛けて組み上げてきました。
クライマックス、かつての依頼者たちや街の人々の声援を受け、風都の風に助けられるダブルの姿を評しての冴子の“街を救った”の言葉。園咲琉兵衛の“街に救われた”との呟き。
――このふたつのセリフが『ダブル』という作品のすべてです。
それを見事に体現してみせたこの映画は、テレビシリーズの劇場版として最高の出来であると断言できます。
あ、秋からの放送開始に先駆けて登場したオーズも恰好良かったですよ。変身音以外は。
前日譚の小説「Nのはじまり/血と夢」の感想はコチラ。
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