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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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籘真千歳『スワロウテイル人工少女販売処』

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)
籘真 千歳 竹岡 美穂

早川書房 2010-06-30
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★★★★☆
今日愛した人間を明日も愛することは彼女たち水先案内人には難しい。
だから満遍なく今このとき目の前の人間を愛し、愛され、幸福を得るように造った。

“種のアポトーシス”の蔓延により、関東湾の男女別自治区に隔離された感染者は、人を模して造られた人工妖精と生活している。その一体である揚羽は、死んだ人工妖精の心を読む力を使い、自警団の曽田陽介と共に連続殺人犯“傘持ち”を追っていた。被害者の全員が子宮を持つ男性という不可解な事件は、自治区の存亡を左右する謀略へと進展し、その渦中で揚羽は身に余る決断を迫られる――。


 ハヤカワ文庫JAの“ライトノベル・レーベルで活躍する作家達が、ハヤカワ文庫で魅せる新たな輝き。”企画の1冊。『第六大陸』の個人的大ヒット以降、ハヤカワ文庫JAまでチェックするようになってきて、最近はどんどんミステリから離れていっているような……。
 そんなこんなで手に取った本作『スワロウテイル人工少女販売処』。
 べ、別に表紙の女の子に惹かれて買ったわけじゃないんだからねっ!!

 筋立てとしては上記あらすじにもあるように五等級の人工妖精・揚羽と人間の曽田陽介がバディとなって“傘持ち”なる殺人者による連続殺人を追う――といった内容で、現に90ページあたりまではハ-ドでスタイリッシュな近未来SFミステリーの様を呈しています。が、本作全体においてはこの“傘持ち”事件の解決に大きな比重は置かれていません。
 いや、物語の根底部分に“道”として確かに“傘持ち”事件が存在し、最終的にそれによって生じた事態の収束でお話を〆るわけだから間違ってはいないのだけど、なんというか全体に散漫。始めと終わりはある程度直線の上にありながら、その間の区間はかなり好き勝手に動き回っちゃっている感じ。
 事件解決に向けて調査を進めていくのかと思ったら、そちらを放置して人工妖精工房での仕事の話になり、かなりのページをそちらに割くので「お、こっちが本題なのか?」と考えていると、なんやかんやで再びサスペンスフルな展開に突入といった具合なので、読んでいてその筋道に首を傾げることが少なくありません。果てはちょっとセカイ系ですしね(ここでいう“セカイ”は東京自治区ですけど)

 しかし。そんなことを気にしてこの作品の本質に目を向けずにいたら、確実に損をします。そのくらいにこの物語は美しい。蝶型微細機械体によって完全なる清潔感が保たれた作中の東京自治区のようです。
 テーマはずばりまさしく“恋”。完璧なまでの理想論を掲げて、人工妖精という第三の性を用意して語られる、とびきり純真で繊細な、純粋なまでの“恋”の物語は、胸きゅん度天元突破で赤面ものにも程がある。そしてだからこそ置名草の一日草としての物語が、これでもかというくらいに心に響く。勿論、揚羽の物語も。
 作品で描かれる心情描写と、舞台となる環境のヴィジュアルイメージがこれでもかというくらい合致しているから、ここまで美しい物語が紡がれるんでしょうね、きっと。


構成に難さえなければ間違いなく★×5
その多少難アリなストーリー構成に目を瞑っても、充分以上にオススメです。



追記:
あ、先日のエントリーで言っていた「伏線」はこの本の作者紹介コメントの部分でした。
何のことかは読んでみてのお楽しみ。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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