2010.07/25 [Sun]
米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』(2008年以前の読書感想 補完)
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★★★☆☆
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?
「小市民」シリーズ 第2作。昨日に続いて補完編。
これでひとまず、ひとシリーズ分の感想を片付けられた、と。地道だ……。
本作で衝撃的なのはなんといってもラストです。米澤穂信の作風はライトなタッチでほんわかと進めておいて、最後の最後で後味悪い結末へ――というのが多い。こういう若干の鬱テイストって、何だか知らないけれど世の中で流行るんですよねぇ。米澤穂信がいまやミステリ愛好者以外の一般層への求心力も備えた人気作家にまでなったのには、こういったカラーの合致もあったと思います。
(以下、多少のネタバレあり)
話を戻して、この作品の後味の悪さは同著者の『氷菓』ほどではないにしろ、かなりキツいです。キャラクターを立てるタイプの作品(勿論、ミステリ自体の質も高いですが)でこれをやられると読んでいる側としては結構堪えるというのが正直なところ。労力を費やして読んだ小説がバッドエンドというのは色々な意味で悲しい気分になるので……。
しかし、このエンディングはただのサプライズ演出ではありません。そこは米澤穂信。きちんと考えています。つまり、恋愛関係でもなく依存関係でもない、互恵関係にあるふたりの高校生を“次のステップ”に進めるためには一度、既に出来上がっている関係をすべてぶち壊す必要があるわけです。創造は破壊からしか生まれませんからね(by.紅渡)
そんなわけで蒔かれた種がどのように芽を出すのか、その結果は次巻を読んでということで。
追記。
当時、オビの煽り文からシリーズ名が<小佐内スイーツセレクション>に決まったのかと思って、なんてステキなネーミングなんだ!と感動していたら、普通に「小市民」シリーズのままだったという悲劇。
(2008年以前の読書感想 補完)
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