2010.07/24 [Sat]
米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』(2008年以前の読書感想 補完)
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★★★☆☆
小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
「小市民」シリーズ 第1作。
本を読んでなければ過去の感想を補完すれば良いじゃない――ということで、およそ半年ぶりの読書感想・補完編。
果たして、このペースでアーカイブ内の作品コンプリートできるのだろうか……。
さて。本作は日常の謎ものの連作短編集です。各章がそれぞれ独立した謎解き話にありながら、最終的にひとつの物語として収束させる構成となっており、まさに連作というべきつくりになってはいるのですが、実はこの流れに関してはあまり上手いとは思えませんでした。
というのも、小出しにされた伏線を最終章で回収しているのではなく、この最終章を用意するために“ある事件”を敢えて解決させずにだらだら続けているような印象を受けるからです。そのため読んでいる最中はなんで解決していない謎があるのに次の章に進むの?といった感じで、どうにも消化不良でした。
一方で個々の章に関しての謎解きは文句ナシに面白いです。さすがは、どちらが次に下車するのかを“日常の謎”にまで仕立て上げたシリーズの第1作。そこは安心して大丈夫です。
小鳩君が小市民を目指すきっかけとなったエピソードは現実と探偵の相容れなさを存分に描いていて、ミステリ好きとしてはこの冒頭部分だけで既に大満足。どちらかといえば 謎解き>被害者心情 の古典ミステリ的探偵像へのアンチテーゼですよね。現代でも山口芳宏作品の探偵とか、間違いなくこう言われるタイプでしょう。
うん。私自身も自分の謎解き欲(?)を満たすために動くタイプの探偵はあまり好きではないので、ちょっと溜飲の下がる思いでした。
(2008年以前の読書感想 補完)
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