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映画『悪魔を憐れむ歌』

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★★★★☆
ということは、殺したヤツが同じ手口で殺されたんだ
殺人課の刑事ジョン・ホブズは、自らが逮捕した凶悪な連続殺人犯の死刑に立ち会う。すべてがそれで決着したはずだった……。しかし、同じ手口の殺人事件が起こった時、ホブズは、死刑が本当の悪夢のプロローグに過ぎなかったことを実感する。次々と起こる殺人、浮かび上がる、謎・謎・謎……。ホブズはついに、人知を超えた存在との全面対決を決意する。


地上波で放送していたので視聴。
先週はこれといい、『デジャヴ』といい、やけにデンゼル・ワシントンの映画がやってたなと思ったら、『ザ・ウォーカ-』の公開に併せてだったみたいです。納得。

 タイトルに反して本作はホラーではなく、基本的にはサスペンス。そして質の高いミステリ映画。アザゼルなる悪魔が様々な人間に乗り移って殺人を犯しているのに気付いた主人公の刑事が、執拗に手を出してくるアザゼルに狙われながらも、なんとかしてその存在を倒そうとする話です。
 ここまでのあらすじならばどこにでも転がっていそうな捻りのないB級映画で、実際、殆どストーリーに関わってこないくせに悪魔と戦う組織があることを仄めかしたり、じゃあなんで彼らが動かないのかとかはまるで放置でツッコミどころも多くあるのですが……。ですが、ですよ。
 この作品、ラストにとんでもないことをしでかしてくれます。まさか映画という媒体で“これ”をやってのけるとは。映画で「やられた!」系の作品といえば『リターナー』を真っ先に挙げる私ですけど、本作はその次くらいにやってくれたと思います。完全にワンアイデアの一発ネタに依ってはいますが、むしろそこを評価したい。このラストだけで★×1、余裕で追加です。
 
しかも、よくよく見てみるとこの“仕掛け”を成功させるために、作品全体がかなり巧妙に作られていることがわかります。

(そんなわけで以下、ネタバレ)


 視聴している最中、やけにモノローグが多いな、と思っていたのですが、まさにそこがこの作品の肝であったわけです。ホッブス(放送された吹き替え版だと主人公の名前がホッブスなんです)の語りかと思っていたものが、本当はそれらすべてホッブスに憑依したアザゼルによるものであったという叙述トリック。この“語り”が冒頭のわずかなセリフのみであったなら、ここまでのやられた感は生まれないでしょう。随所に挿入されていたのにまったく気付かなかったからこその驚き。まさに叙述形式によって成し得た叙述トリック映画です。
 加えて、モノローグと同様の形式(つまり直接描写をせずに、別のシーンに音声だけを載せる手法)で電話のやりとりの回想を何回か挿んだことで、観客に“この語りはホッブスのものである”という思考を、ごく自然に植え付けることに成功しています。

 この叙述自体にもかなり気が払われていて、例えばクライマックス直前のシーンではわざわざ「ホッブスとアザゼルの一対一の闘い」という表現をしています。真相は「ホッブスと私」であり、物語の流れとしては「私とアザゼル」になるはず。ですが、ここを敢えて両方とも三人称にしたことで観客に嘘をつくことを見事に回避しています。
 冒頭部分での「この歳になって」のセリフも、見返せば見返すほど小憎らしいことに、実は悪魔の何百歳という年齢のことを指していたことに気付かされます。

 さらに映像における叙述トリックの最大のミスリード要因は“声”に他なりません。ホッブスの声で喋っているのだからホッブスの語りである――われわれは何も疑わずにそう思ってしまいます。しかし、ホッブスに乗り移った悪魔の声もまた、ホッブスと同じなんです。まさに映像だからこそできる仕掛け。ここらへんは物語を見ていたら当然示されている事実でもあり、非常に巧いです。


一度見て、それから再び冒頭に戻って見直してみると、この映画のすごさを改めて実感できること請け合いです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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