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『どちらかが彼女を殺した』はどちらが彼女を殺した?

更新するようなこともなかったので昨今の東野圭吾ブームに便乗してみた。
東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』についての考察です。


既に4年前になるのですが、
友人が東野圭吾にこれ以上ないくらいにハマって熱烈に薦められたことがありました。
その時に是非読んでほしいと言われたのが、この『どちらかが彼女を殺した』です。
最後まで読者に犯人が明かされずにラストを迎えるこの作品。
意見を聞きたいということだったので読んでみました。

さて、犯人はどちらなのでしょう?
以下は当時、私がその友人に送ったメールをサルベージしたものです。
(一人称のみブログに掲載するに際して“私”に変更しましたが、その他の文章はそのままの状態です)

(以下、ネタバレ)

読み終わったので犯人の推理を。

推理の手引きに従って考えてみると犯人は佃。利き手が鍵らしい。園子(左利き)の薬袋は2つとも右利き破り。そのうち1つは佃(右利き)が注意を払って偽装したことを自供しているので問題は2番目の袋。
一方で弓場は偽装とは逆の方向に自分が飲む薬袋を破っているわけだから、左利きということになる。となると弓場がわざと園子の薬袋を右方向に破ったのか?それは考えにくい。

佃の場合は自分がミステリファンであることを留意した上で袋を右方向に破ったことを自供しているのに対し、弓場がミステリに通じている描写はないから、袋の切り口の方向までは気にしていないと思われる。そうすると弓場は自然な形で園子の薬袋を破ったハズだから、その方向は左になるのが普通。また、弓場は園子と長い付き合いだったことから利き手の使い分けは当然知っていたと考えられる。だとすれば尚更残された袋の切り口と矛盾が生じてしまう。
よって、佃が再び戻った後、同じ偽装を施して園子を殺したと考えるのが妥当。

とはいえ不自然な点もある。康正が見つけた電話番号のメモ。弓場の名前が「カヨコ」ときちんと書かれていたのに対して、佃の名前は「J」と伏せられていた。園子自信が佃の名前を伏せるのはおかしいし、理由もないと思う。
なので作品中に指摘はないものの、このメモにも偽装の可能性がありそう(筆跡については述べられていない)。
じゃあこのメモは何を意味しているのかということを考えると、このメモこそが真相を解き明かす手掛りであろうという結論に達する。そこから導き出せる結論はこう。犯人は弓場である。

私の考える最終的な答えは、「弓場が『佃が自殺を偽装した』ように偽装した」というもの。つまり、弓場が佃に罪を着せて園子を殺したというわけ。
前述の推理で弓場がミステリ好きという描写はないという旨を述べたものの、何もミステリファンでなくとも利き手云々の話は割と有名なので彼女がそれを知っていた可能性も充分有りうる。で、佃がそのミスを犯したことを知って弓場は敢えて2つ目の袋を右方向に開けた。
メモで佃の名前を伏せたのはそちらに疑いが向くようにする為。人間、明らかに名前が判明しているやつより隠された方を怪しむものだし。

さらに、メタ的な考え方をするとほぼ答えを明かしているに等しい「推理の手引き」を巻末に載せている(利き手さえ判れば決定打)ので、大人数が容易に同一推理&犯人に至ってしまう。
でも敢えて犯人を明かさずに終えているからには、それを覆す程の真相があるに違いない。
そんなわけで私は弓場佳世子犯人説を支持します!
超長文、失礼しました。



――ええ。
ケータイのメールでここまでの文量を打って己が推理を披露したのですが、
友人はそこまで本気で推理をしようと思っていなかったらしく
返ってきたその反応たるや実に淡白なもので。
まぁ、いまでは良い思い出ですよ。


改めてこのメール文を読むと、まず極めて型通りに推理を進めています。
犯人は佃

たぶんこれが確定的に明らかな事実で、
前述の“推理の手引き”に従った結果、導き出された答えなので
真相はまず間違いなくこうでしょう。おそらく9割9分9厘。

しかし、それだと極めてつまらないんですよね。
“利き手”が推理の決定的ポイントって、今更も今更。
そんな使い古されたオーソドックスの極みみたいな手段で――何の面白みも斬新さもない手法で、
ミステリを書くなよ、と私は憤ったわけです。


そんなわけでメールの後半部分はかなり暴走してます。
つまり、作家としての東野圭吾が“そこ”に甘んじていた場合は犯人は佃。
何としてでも読者を裏切ってみせようという精神の持ち主なら、犯人は佳世子。

それが私の答えです。


私自身はエラリー・クイーンも読んだことない、にわかミステリファンなので
もしかしたら的外れな意見かもしれませんが
実際のところ、これって後期クイーン問題を内包してるというか
――読者を探偵役に据えたことで、問題を“作品の外”にまで持ってきてしまってますよね?


ウィキペディアの後期クイーン問題 第一の問題の項にはこう記述されています。

「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」についてである。

つまり“推理小説の中”という閉じられた世界の内側では、どんなに緻密に論理を組み立てたとしても、探偵が真相を推理することはできない。なぜなら、探偵に与えられた手がかりが完全で全て揃っている、あるいはその中に偽の手がかりが混ざっていないという保証ができない、つまり、「探偵の知らない情報が存在することを探偵は察知できない」からである。



最終的に加賀が突き止めた犯人が誰であるか、
それが読者側へ明らかにされていない以上、犯人がどちらであってもおかしくはないし
またそれがどちらなのかを知ることは永遠に不可能なわけです。

古野まほろ『天帝のはしたなき果実』の推理合戦のシーンでは
吹奏楽部の面々が各々の推理を披露した後に、他の部員がその推理における不可能要素を提示することで
推理そのものを突き崩してみせますが、そこであったのが“共犯者双子説”です。
それ以前に当該人物が双子だという情報は皆無であったにも関わらず、
その場面になって突然その事実が突きつけられる。

推理合戦をしていた部員たちの中にはその情報を知らない人間も当然いたわけで。
つまり、ここでいう“双子の存在”と“知らなかった部員”の関係が、
この“『どちらかが彼女を殺した』の物語”と“われわれ読者”の関係に、そのままシフトされてもおかしくないということです。

作中で示された“手掛かり”が本当に正真正銘の手掛かりなのか?
そもそも手掛かりはすべて明かされているのか?
展開されていた推理、巻末に付けられているヒント自体が実は壮大なミスリードなのではないか?
読者の側にはそれを知る術はありません。

――でもまぁ、
なんだかんだ言っても、犯人はストレートに推理したまんまで佃なんでしょうけど。


ちなみに私はこの作品の淡々と進む様に面白さを微塵も感じなかったのと、『探偵ガリレオ』の微妙さ加減以来、
完全に東野アンチなので悪しからず。
それでも『容疑者Xの献身』と『聖女の救済』は惹かれるんだよなぁ……。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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