2010.05/31 [Mon]
築山桂『御堂筋の幻 一文字屋お紅実事件帳』
![]() | 御堂筋の幻 (一文字屋お紅実事件帳) 築山 桂 廣済堂出版 2006-09-16 売り上げランキング : 524946 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
私も役に立ちたいの。猿飛一味の仲間だもの。お願い。
大坂町奉行だった鵜殿出雲守が闇で儲けた金塊を大坂の町に隠しお役替えで江戸に戻った。後にそれを知った妾腹の息子・和馬が隠された金塊を探しに江戸から大坂へやって来た。時を同じくして、金塊の秘密を知る老人が突然消えた。唐物問屋博多屋と手を組み非道を繰り返す和馬。「博多屋と和馬を潰す!」元盗賊で町奉行与力の手先を務める望月仙太郎がお紅実ら仲間たちと立ち上がる。彼らの悪事を探るうちに、五十年前に闇に葬られた事件の真相が明らかに……。
「一文字屋お紅実事件帳」第2作。
前作『紅珊瑚の簪』よりもこちらの方が断然好み。以前に読んだ『鴻池小町事件帳』同様、無事に事件は解決したのだけど決してすべてが丸く収まったわけではないという(ネタバレ?)シビアさが良いです。そもそも人死にが出ているにも関わらず、悪者倒してハイ終わり、といくわけもなく。当然といえば当然ですよね。築山桂は女の子の心理描写もさることながら、そういったビターな表現も上手いと思います。
このシリーズは一応、義賊ものの体裁をとっていますが、今巻の事件はそのまま現代の社会派ミステリでやっても充分に通る内容。尚且つそれで面白くなりそう。日本を訪れていた外国の通使が殺され、責任者がその事件をなんとかして早期解決させようとした結果の悲劇――。『相棒』なんかで放送されてもまったく違和感のないハードさです。時代小説とはいえ、何百年後の現代でも共通の、社会が普遍的に抱えている問題の提起という意味では相当濃いです。話の展開自体はそこまで予想外なことは起きていないものの、前述の作品全体に流れる空気感含め、読み応えのある小説でした。
ラストには珊三郎のいわく有り気な過去を匂わす様な描写もあって次巻以降、ますます盛り上がっていきそうな――って、続刊出てないじゃん!! あんまり売れなかったのかなぁ。いずれにしても4年も放置ということは、続きの刊行は絶望的かもしれん…… o...rz
スポンサーサイト
Comment
Comment_form