2010.05/15 [Sat]
青柳碧人『浜村渚の計算ノート』
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★★★☆☆
君たちの友人が殺人者になる確率は、『同様に確からしい』というわけだ
役に立たないからと、数学が義務教育から消えた。抗議する天才学者ひきいる“黒い三角定規”は、テロ活動を開始する。数学を学んだ者は組織に洗脳されているおそれが強いことが発覚し、普通の女子中学生・浜村渚が警視庁に助っ人として起用された。警察もビックリする彼女の活躍で、事件は次々と解決する。
ごめん、ドクター・ピタゴラスの“同様に確からしい”のくだりを何回読んでも吹くww
――それはさておき『浜村渚の計算ノート』。数学がテーマの一風変わったミステリですが、特にミステリに拘泥することなくともあくまでミステリ風味のエンタメ小説として楽しめます。というか、そっちが普通の読み方なのかな。
一編目の「ぬり絵をやめさせる」は“いかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗るには4色あれば十分”という四色問題(四色定理)がテーマ。“黒い三角定規”の仕掛けるテロ行為は四色問題の実験ものであり、人を殺すことによりそれを実証していきます。この実証行為=連続殺人を止めるためには“黒い三角定規”の実証実験を実質的に頓挫させる必要があるのですが、これが一見して不可能に思えるような状況になっています。ここで渚が講じた手段が驚くべきものなのですが、それに備えてきちんと作中での伏線が張られている――極めてフェアなつくりになっています。これ、西尾維新の『刀語』と同じ手法なんですよね。
その他の章は決して内容がミステリというわけではないものの『ダ・ヴィンチ・コード』でお馴染みのフィボナッチ数列や円周率、ゼロに関する数学談義も面白いですし、何といっても数学好きしか落ちないだろというような渚の説得でなんとなく纏っちゃう様が読んでいて楽しいです。ただ、語り部の武藤さんは渚に同調する立場でいるよりも、しらっとした目のツッコミとして配置した方がより面白くなったかなぁとも思います。
中学くらいの数学の問題を解くのが好きだった人、教科書なんかに載っているコラムが好きだった方は是非。
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