2010.05/08 [Sat]
小川一水『第六大陸(2)』
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★★★★★
第六大陸は新しい世界になるよ。
いろいろな人々が結ばれて、ここから旅立っていくんだ。
天竜ギャラクシートランスが開発した新型エンジンを得て、月面結婚式場「第六大陸」建設計画はついに始動した。2029年、月の南極に達した無人探査機が永久凍土内に水の存在を確認、もはや計画を阻むものは存在しないかに思われた。だが、再起を賭したNASAが月面都市建設を発表、さらには国際法上の障壁により、「第六大陸」は窮地に追いやられる。計画の命運は?そして、妙が秘めた真の目的とは。
「第六大陸」第2作。
前巻の時点でかなり褒めていたこの作品、実質的な下巻で本巻を読み終えて改めてその感想を語る前に、言っておきたいことがあります。
小説の個人的マイベスト10 第2位 に決定っ !!
困難に立ち向かう人々の奮闘とその軌跡を軸に、そこに家族の確執や恋愛要素、ライバルとの関係などの人間ドラマをスパイスとして加え、さらには非常に現実性を保った物語でありながら夢とロマンを忘れないSF的展開。ストーリーもキャラクターも設定も展開も結末も、そのすべてが最高の小説でした。小さな女の子が“月に結婚式場を建てる”ために宇宙に行く、というあらすじに興味を持って何の気なしに買ってみたこの作品が、ここまで素晴らしい出逢いになるとは誰が予想したでしょう?
――いや、誰もしてなかった(反語)
さて、内容。本巻は正に問題続発。何だかんだで順風満帆であった「第六大陸」計画に次々と大きな障害が立ちはだかり、降り掛かります。前作終盤からのNASA問題が無事解決したかと思えば、次は“月協定”なる国際法への抵触からアメリカ→日本の訴訟問題へと発展。そしてある事故を契機にメディアからは非難の嵐。人間関係には亀裂が走り、妙ちゃんと走也の間にも埋められない大きな溝が。エデン社の事業撤退により計画は完全破綻まで秒読み段階まで一気に落ち込み、資金難から月面建造中の「第六大陸」そのものが借金の担保にされてしまう始末。
しかし、かつて「創造は破壊からしか生まれませんからね」という『ディケイド』客演時の紅渡の言葉にもあったとおり、ここからの再起がまた見ものなわけで。怒涛の展開に打ち震えます。心の動きに胸打たれます。
極限の逆境、最悪の絶望から這い上がってくる様は、スポ根精神さながらに熱く、月並みな表現で恐縮ですが、手に汗握る物語に登場人物と共に一喜一憂とはこのことを言うんでしょうね。
例の事故のシーン、感動的な場面の直後にそれですからね、その落差といったらないし、そこを演出するために前もって、失敗or成功にしろ大きな“何か”が待っていることを提示して読者を煽っているのも上手いです。扉とかね、意味深過ぎてもう……。
――兎にも角にもこの『第六大陸』全2巻、圧倒的にオススメします。是非、読んでみてください。
それにしてもミステリ好きでありながら好きな小説ベスト10の1位、2位が共にSFってなんなんだろ。実はSF気質なんだろうか?
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