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梓崎優『叫びと祈り』

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
梓崎 優

東京創元社 2010-02-24
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★★★★☆
あなたは何も分かっていない
砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇……ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理。


 東京創元社の連作短編ミステリは最後に各話をひとつにまとめるという手法が慣例化しているらしく、この作品も類に漏れずその体裁をとっています。しかしながら本作では、その肝心の最終章「祈り」がぶっちゃけていうと非常に微妙な出来であるために全体の評価を圧倒的に下げてしまった感が否めません。それが本当に残念です。〆め方は大事ですよ……。

 作品としては雑誌取材の仕事で海外を転々とする斉木を主人公に据えた連作短編のカタチになるのですが、問題の最終章を除いた4編の、そのどれもが究極的にはホワイダニットになっているところが面白い。基本的にミステリの動機部分で驚かせることって難しいと思うんですよ。怨恨だの金目当てだの痴情のもつれだの嫉妬だの、大体のところそこらへんに終始してしまうからです。だから「探偵小説シリーズ」でコモなんかが動機論丸投げ発言とかしたりするわけで。そういったところを上手くかわして、ぶっ飛んだ動機で驚かせてくれた天祢涼『キョウカンカク』は記憶に新しいところですが、本作はそれとはまた違った意味でこちらの想像もつかないようなホワイダニットを提示してきます。
 特に、エボラ出血熱の感染拡大に見舞われた南米のジャングルの原住民集落で起きる連続殺人を描いた「叫び」は、そのどうしようもないやるせなさも相俟って、単体で見れば殆ど傑作といえる域にまで達しています。個人的には第1章で新人賞受賞作の「砂漠を走る船の道」よりも断然こちらを推したい(勿論、この第1章もホワイダニットとしての質は高いです)
 この「叫び」だけでも一度、読んで欲しい作品です。いや、ほんとに。

(以下、ネタバレ)

 これらのホワイダニットがホワイダニットとして成立しているところに、斉木の“旅人”という設定が上手く生かされています。加えて、異なる文化を持つ人々との価値観の違い――なんて聞こえの良いところに留まることなく、さらに一歩踏み込んで相互理解の不可能性までも浮き上がらせているところが異様でもあり、また本作最大の特徴でもあります。それが最も顕著なのが前述の「叫び」なんですね。

 一方で「凍れるルーシー」もまた大きな意外性を孕んだ作品でした。ここで推理することは2点。“生ける聖人”が既に死んでいることの証明、そして動機。またも焦点となる動機が、やはり意外の一言です。
 この話の要旨はおそらく斉木のセリフ“あなたは何も分かっていない”に要約されていたかと思います。分かっていいないとかそういう次元ではなくて、永遠に理解し合えない。それは犯人側からしてもまた同じで、あちらからするとむしろ何故そこで殺人を犯して然りだと考えないのかが謎なわけです。そこが文化の違いに隔たれた人々が理解し合うことの難しさであり、そしてこの作品最大の魅力でした。

 で。この「凍れるルーシー」ですが、オチがなんともわかりにくい。というかこれ、いわゆるオープンエンドなのかな。とても解釈に困る。私としては、本当に“復活”があって、蘇った彼女が斉木たちの前に姿を現したと読んでいるのですけど、どうでしょう?
 考え方としてはもうひとつ。犯人だけに“見えている(=発狂?)”ことに斉木が怯えて、というのもアリなのですが、こちらは斉木が青ざめるほどでもなさそうですし……。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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