2010.03/25 [Thu]
海堂尊『螺鈿迷宮(下)』
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★★★☆☆
いいか、医学生、医学とは、屍肉を喰らって生き永らえてきたクソッタレの学問だ。
そのことを忘れてはいかん。
医学生・天馬大吉が潜入した不審死の続く桜宮病院に、奇妙な皮膚科の医者がやって来た。その名も白鳥。彼こそ、“氷姫”こと姫宮と共に病院の闇を暴くべく厚生労働省から送り込まれた“刺客”だった。だが、院長の桜宮巌雄とその双子の娘姉妹は、白鳥さえ予測のつかない罠を仕掛けていた…。終末医療の先端施設に隠された光と影。果たして、天馬と白鳥がそこで見たものとは?
そんなわけでメディカル・エンターテイメント第3作の下巻。
空気は上巻の方が好きだったかなぁ。解決編なので上巻のそこはかとない幽玄さはすっかりなりを潜め、桜宮病院で起こっている“現実”が明らかになります。ミステリとは違って大方が犯人の自白によるもので爽快感に欠けます。また、インターネットサイトのハンドルネームもそのまんま過ぎてわかり易過ぎる。それ以前に、桜宮が何をやっているのかということは想像に難くなかったですし。
ただそれ自体を否定できるかと言われたら難しいところです。自殺云々はともかくとして、安楽死じゃないですけど最期の時をせめて安らかに、という考え方はあながち間違っているとは思いません。まぁそこをビジネスにしてしまうのは問題以外の何ものでもないのですが……。それに、今回のように“人が死に過ぎる”ようになる前の桜宮病院のシステムは本当に理想的なカタチであるとも思います。そうして見てみると良い病院ではあったんですよね、桜宮。そりゃあスキャンダルだらけな上にバチスタ・スキャンダルの余波まで食らっちゃあ、すみれ先生じゃなくたってブチ切れたくなりますって。
それはそうと今回、なんだか作劇が全体的に下手だったように感じます。天馬君への因縁にしたって逆恨みにも程があるし(まぁ本人たちも充分承知な上で怨む対象が欲しかったといのもあるのだろうけど)、それが著者の“ロミ×ジュリ的な恋愛を描き出したくなっちゃった”感による後付設定にしか見えないのは問題。別にそこにはこころ動かされませんよ、海堂さん。
終盤も映像化意識かと思うような大味さ。加えてその手前の場面からフェードアウトしていた人物が何故かその終盤の“出来事”で死んだことにされており、説明どおり「へぇ、普通に死んだんだ」と思って読んでいたらあの展開ですよ。いやいやいや。こっちが最初に思ってた通りじゃん。ひっくり返すのに失敗したスパニッシュオムレツみたいになっちゃってますけど(意味不明)
白鳥さんは正編よりもこっちの、落ち着きがあった方が好きです。なかなか紳士的で好感持てます。というか田口先生よりも天馬君の方が良いし、こっちのシリーズ(になる予定らしい)の方が自分に合ってるかも。
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