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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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映画『カフーを待ちわびて』

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今日から、お世話になります。
沖縄の小さな島で雑貨店を営みながら、愛犬・カフーと静かに暮らしている明青。そんな明青のもとに、幸という女性から「お嫁さんにして下さい」という一通の手紙が届く。それは、旅先で冗談半分に残した「嫁に来ないか」と書いた絵馬への返事だった。だが、島を突然現れ、家に転がり込んできた幸に、内気な明青は何も訊くことができない。少しずつ幸に惹かれていく明青。しかし幸にはこの島を訪れる理由があった……。(2009年 日本)


 あぁこれ、かなり好きかもしれない。いや。スキですねぇ~(スキゾウさん風に)
 まるでラブコメものアニメかギャルゲーのような展開で始まる本作ですが、そこが良い。高須賀由枝の『グッドモーニング・コール』みたいな90年代の少女マンガではないけれど、こういう偶然から始まる運命の恋的な設定にはどうにも弱い私です。
 特に目まぐるしい展開や派手な事件が用意されているわけはないですが、ふたりで重ねた時間が、確かに互いのこころのうちに変化をもたらして。しかし、ふたりの関係はひとつの“謎”を隔てて存在する儚いもの。何故、幸は自分の元を訪れたのか?それを聴いたらすべてが終わってしまうかもしれないから訊けない。そんな明青の気持ちと、秘密を抱えて時を過ごしていることに悩む幸の胸中。それでも一緒に暮らすその時間は幸せなんですね。

 興味深いのはこの作品、恋愛映画なのに「好きだ」とか「愛してる」なんて一言も発してないんです。明青も幸も。だけど、そんなちゃちな言葉なんかに頼らずともふたりが互いを想っていることは充分にも十二分にも伝わってきます。というかキスシーンすらなかったこの映画は恋愛映画としてはかなり異色なんじゃないか?と今更ながらに気付いた次第です。
 愛してるというよりもただ単純に相手のことが好きで、相手が幸せであれば自分も幸せ。ここで描かれる恋愛は、既に純愛とかそういった尺では測れない、究極的なヒーリングに近いものがあります。
 そこらのセリフだけのわからない恋愛映画や恋愛ドラマはもっとこの作品を見習うべき。
 
 主演のふたり、玉山鉄二とマイコも良かったです。このふたりだったからこそ、これだけ素晴らしい作品に出来たのではないでしょうか。それぞれのキャラクターが纏う空気感が本当に自然に表され、恐らくはこのふたり以外にはありえないほどにマッチしたキャスティング。特に、幸のおてんばだけどどこかのほほんで、それでいて少し影のある感じってそう出せないと思うんですよね。私の場合は普段、作品は内容による判断で出演者までどうのというのはあまりないのですが、これはそうではありません。それだけで既に特別です。

 また、拓海のスニーカーを探した夜の、月を見ながら話すふたりの画的な構図もかなり好みでした。幸は店の屋上(?)で空を見上げつつ、明青は道の電信柱の元に座り込んで、というまったく目を合わせないで――もっと言うなら相手の姿すら捉えずに交わす会話。「私はただ明青さんに連いていっただけ」「月がこんなに明るいなんて知らなかった」そんな取りとめもない会話なのですが、なまじ向かい合って話しているときよりも、断然深く染み入ります。そんな、ちょっとしたことにもかなり感化されてしまいました。

 ちなみにmoumoonが歌う主題歌「EVERGREEN」のPVは本編終盤の補完的内容にもなっていて、これを見るとより作品世界に浸れること請け合いです。この主題歌がまた良いんだよ……。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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