2010.03/16 [Tue]
汀こるもの『完全犯罪研究部』
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★★★☆☆
いいえ?授業よ。人生のね。
ミステリについて語り合い、校内で発生した事件を推理する醍葉学園“推理小説研究部”。だが顧問教師・由利千早は就任早々知ってしまった。部員・杉野更紗の姉を殺した犯人をはじめ、悪人の始末を目論む「裏の部活動」を。日夜、完全犯罪テクを研究する部員たちはそれを武器に大暴走。由利先生に彼らの正義を止める手立てはあるのか?そして彼女たちを襲う命の危機。
タイトルに反してまったく本格ミステリではないですが、青春モノの小説としてはなかなかどうして出来が良かったと思います。ラストのJホラー的オチはともかくとして、本編の終わり方とか普通に良い話じゃないですか、これ。よもや『パラダイス・クローズド』できちんと本格しつつも日本中の本格ファンに喧嘩を売った汀こるものが、まさかこういう方向で書いてくるとは。
ただ、この作品も形式破壊っちゃあ形式破壊ではあります。こんなあらすじを語られたら誰だって由利先生が聖職者のように思うところですが、彼女は違います。結構黒いですよ、由利先生。こんな悪魔たちの相手?ふざけんな、みたいな。大体そんな性格。不倫とかもしてますし。だから由利先生は決して正義心に燃えて生徒たちを正しい方向に導こうとかは考えていません。強いていうなら自分の身の安全と一応の倫理観念に基づいて動いてます。
そしてあらすじを読んでわかる通り、相当に痛い高校生たちが出てきます、この作品。しかしながら青春とは即ち痛いもの。暴走して然りなんです。高校生の部員らの行動原理の在り様、アイデンティティに揺れる様子は、あぁ思春期だなぁという雰囲気がとても感じられます。確かに、この年代のこの時期だからこその物語。それ以外では成り立たない。そこが良いわけです。
また、古野まほろの『天帝のはしたなき果実』を読んだときにも思ったのですが、あれだけのことをやっておきながら普通に赦せるというのも実は凄いことなんですよね。恐らくはそれも青春の成せる業。その、言葉がどうのとかではなく本当のところで繋がっているという関係。こういうの好きです。
あと一応ウリである“魚薀蓄ありません”ですが、ギリギリセーフでしたね。もう少しで入ってましたよ、薀蓄。というのも古賀君がタナトスきゅん受け売りの例の“赤の女王”仮説を語ろうとしたのですが、相手が聞く耳を持たなかったんですね。危ない危ない。と、まあそんな感じで本作は「THANATOS」と世界観が同一で、“探偵”の方が文字通り友情出演なさっています。
――しかしそれはともかくとして、これ、完全にヲタ向きなつくりなんですけどどうしましょう?
会話内容がネットスラング×ミステリ×アニメというカオス加減。
「バカなの?死ぬの?」
とかはまだしも、
いちばん酷かったのは
「CLANNADみたいなものか」
「クラナドって何?」
「人生」
……もうダメだよ、こるものさん orz
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