2010.03/03 [Wed]
西尾維新『化物語(上)』
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★★★★☆
僕が訊きたかったのは――
こいつを、八九寺を、お母さんのところに一体どうやったら連れて行ってやれるかって――それだけだったろうが。
ある日、阿良々木暦めがけて降って来たクラスメートの女の子、戦場ヶ原ひたぎには、体重というものがなかった!?
新しい時代の、青春怪異譚。
「化物語」シリーズ 第1作。
世間一般では「物語」シリーズと呼ばれているようですが、イマイチ据わりが悪いのでやっぱりここは「化物語」と呼びたいところ。思えば西尾維新のシリーズ作品名って誰が言い出したのか、どうにも微妙なネーミングが多いんですよね。「人間」シリーズだの「世界」シリーズだの。そこは「零崎一賊」と「「きみとぼく」本格ミステリ」で良いでしょ、常考。
そんな「化物語」は言わずもがな昨今の西尾維新ブームの立役者。なんせ日経エンタにもインタビュー載ってましたからね、西尾維新。いったいどこに行くの?
そうはいってもシャフト演出、新房ギライ(『なのは』は許す!神!!)の自分からしてみれば例のアニメ化は発表段階から失敗確定といっても過言ではなく、さらにはこの作品で内容的にも西尾維新=ライトノベル作家のイメージを確固たるものにしてしまったという因縁の敵でもあり(あと価格。講談社BOX創刊当時)西尾維新はミステリ作家というスタンスをあくまでも崩したくない人間としてはこれまで敬遠してきたわけです。はい。
とはいえ、最近はもう維新ぼんに関してはライトノベルで良いよ的に譲歩しているのが現状だったりします。実際、そんな感じの痛々しい引用も多いし。諦め模様は夏模様ですよ。
前置きが長くなりましたが本題です。本作の最大の特徴はなんといっても、物語の大半を占める登場人物たちの意味なしitなボケ&ツッコミの会話劇――ということになっていますが、それだけに注目して終わらせるには惜しい作品なのがこの作品です。
笑いとキャラクター劇に比重が置かれている本作ですけれど、実際に読んでみると実はその影に隠れるようにひっそりとある本筋の物語も意外としっかり作られていたりします。その多くがそれぞれの人間が抱える心の問題に端を発しているのですが、そこから紡がれる物語は時にハートフルであり、一方でバトルアクションだったりして話ごとに緩急がついているあたり、さすがは西尾維新。
特に良かったのが第二話「まよいマイマイ」。結末は勿論のこと、前話である「ひたぎクラブ」での出来事を丸ごと伏線として取り込んだ構成には感心しました。そのため、なかなかフェアプレイになっています。蝸牛の怪異がひたぎの時と同様であるとか、それを込んでのひたぎと阿良々木くんとの違いだとか、すべてが伏線なんですね。決定的場面に傍点がないのがちと残念ですが、多分にミステリ風味な作劇が秀逸でした。
それにしても阿良々木くんがかなりの主人公気質――ヒーロー体質なのが良かったです。西尾維新の小説の語り部っていつもどこか捻くれてるからなぁ。熱い主人公、スキですねぇ~(スキゾウさん風に)
全体として、我が永遠のバイブル『GS美神 極楽大作戦!!』をなんとなく彷彿とさせる雰囲気だったのもまた良し。
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