2010.02/20 [Sat]
築山桂『闇に灯る 寺子屋若草物語』
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★★★★☆
うちらは、この一文が子供らがこの先歩く道に小さな明かりを灯すことを信じて、一文稽古を続けてるんです
寺子屋三春屋に蓬莱堂の丁稚の草太が通うことになった。そんなとき、お鈴という見知らぬ娘が、父親の仇を討つために佐十郎に力添えを求めてきた。しかしお鈴の仇討ちは主家に認められていない。このままだとただの人殺しになってしまうのではと心配するお美和。その話を偶然聞いてしまった草太は、認められる仇討ちもあるのだと知り……。
「寺子屋若草物語」第2作。
前回の事件の中心にいた千太が三春屋に通い続けているその描写だけでも嬉しいものがあります。ミステリなんかでもそうですけど、過去の出来事に触れたり、その時の登場人物が再登場するのってなんか良いですよね。物語が続いてます、って感じで。
さて。今回は、親を殺されその仇討ちを考えるお鈴と、母親を事故で失ってしまった草太の物語。父を失い、さらには兄までも殺されてしまったお鈴が、たとえ認めらずとも怨敵を討とうと決意する一方で、同じような状況にいる草太が手習いに精を出すことで徐々に明るさを取り戻していく様子が描かれ、三春屋の手伝いをする中でお鈴はその姿に何を見るのか?といったところが焦点となります。
どんなに説得されても、子供たちと接して明るさを取り戻しても、それでも最後まで固い決意を胸に仇討ちを為そうとするお鈴の、その揺れる気持ちの在りようがなんといっても今回の読みどころでしょう。
タイトルに込められた意味、お美和の語る“一文稽古の担う役割”が、これまた心にしんと染み入ります。「寺子屋若草物語」の良さはこの“静”の部分にあると思います。行動力でぐいぐい押す登場人物とそれに伴って各々の心情を描き切る他の、“動”の築山作品とはまた違った魅力を持っています。
個人的にお鈴さんは結構好きなキャラクターなので、今作のみのゲスト扱いは正直、勿体無いです。
三春屋の4人目になってレギュラー入りしてくれないかなぁ。
――と、お涼姉さんの方も進展が。意外な伏兵の登場で予期せぬ三角関係に突入です。お涼自身は煩わしく思っているとはいえ、どう転んでいくのかはまったくの未知数。こちらもますます目が離せません。
てか、お涼パートのぴりぴり具合は本当にこちらに緊迫した感情が伝わってくるような文章で読むのがキツいです。
胃がいまにも痛んできそうで、心穏やかではいられない……。
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