2010.02/19 [Fri]
はやみねかおる『少年名探偵 虹北恭助の冒険 フランス陽炎村事件』
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★★★☆☆
世界は完成されねばならない。
それは、神から与えられた崇高な使命とも言えるだろう。
与えられたのは、誰か?
もちろん、それは神に選ばれた者――わたしだ。
あの少年名探偵・虹北恭助がついに帰ってきた!フランスの田舎村にあらわれた亡霊の正体は――?歩く大木と、触れた人が崇られる岩の謎とは?恭助を虹北商店街に連れ戻すため、陽炎村へ向かった美少女高校生・野村響子ちゃんをワトソン役に虹北恭助の推理が冴える!
「虹北みすてり商店街」シリーズ 第5作。
一応のシリーズ完結作ではありますが、実質シリーズ第4作目にあたります。
時系列的にも物語的にも最終巻は前作『少年名探偵 虹北恭助のハイスクール☆アドベンチャー』で、あくまでも本作は高校編へ続く、という終わり方になっています。なんともややこしいww
シリーズ第1作『少年名探偵 虹北恭助の冒険』は人生の中の好きな小説ランキングベスト10に余裕で入るくらいに気に入っている作品なのですが――これは、なんというバカミスww
真相が明かされた瞬間、大爆笑でした。小説を読んでこんなに笑ったのは久し振りですよ。万城目学の『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』にも結構笑わされたけれど、はっきり言って本作の破壊力は比じゃあありません。もう、表紙を眺めているだけで笑いが込み上げてきます。
ほんとバカなんじゃないの、はやみねかおる。これをシリーズのいちばん最後に持ってきたことも、シリーズ唯一の長編(しかもそれなりの分量もあるし)でやったことも。シリアスぶって書いてある序文とか、読み終わってみるとギャグでやってるとしか思えない。
ただ、この本が楽しめるのはあくまでもシリーズを読んできた人間だけで、他のたまたま手に取った人からしてみたら、なんじゃこりゃああ!と壁に投げつけたくなること確実です。しかしながら、シリーズ読者からしてみればこの真相が充分に"アリ"というか――"有り得る"話に思えてくるのが怖ろしいところです。
そしてたとえ舞台がフランスであっても、紛れもなく“虹北商店街”シリーズなんだな、と誰もが納得する筈です。いや、額面どおりで。
ストーリーの見どころとしては、なんといっても高校編から素知らぬ顔でレギュラー入りしている真衛門さんや美絵留との出会いが描かれているところがポイント。なにしろ「To Be Continued」で終わりますからね。むしろ、本作→高校編という読み方が正しいかと。
そしてこの『陽炎村事件』は「夢水清志郎事件ノート」の大江戸編(正確には『ハワイ幽霊城の謎』の過去パート)の直接の続編にもなっているのが面白いところです。作品間リンクが大々的に敷かれているはやみねワールドですが、響子ちゃんの口から清志郎左衛門についてのエピソードが語られるなんて、かなりわくわくします。
さらに本作(の解説)で怪盗クイーンの先祖が誰だったのかということも明かされ、高校編では謎だった真衛門さんと蕎麦、天真流の関係も明らかになります。ふうむ、なるほど。そういった意味ではかなりファン向けな作品に仕上がっているのではないでしょうか。
(この期に及んで以下ネタバレ)
ファンついでにひとつ意見させて貰うと、今回の事件の発端となった商店街の抽選ですが、アレに関しては作品内で語られなかった事実がまだあると思います。
それは、由美子さんは偶然にも特賞を当てたわけではなく、響子ちゃんのお父さんによって新婚旅行として特賞を贈られたのではないか、という可能性。
というのも、「夢水清志郎事件ノート」第2作『亡霊は夜歩く』にて、虹北商店街の福引抽選会は特賞を当てられる券が予め決められており、その年の“担当者”がこの人にならば特賞を与えても良い、と思ったらその当たり抽選券を渡すという仕組みになっていると語られていたハズ。となると、商店街の振興会長としては商店街から出た新婚夫婦に新婚旅行をプレゼントしてあげたいと思うのが人情というもの。実際のところ、これ以上に“当たり”に相応しい人間なんて思いつきません。響子ちゃんが特賞を出したときの会話、由美子さんが当たり券の事実を知らなかったということを踏まえると、かなりの高確率で当たり券は響子ちゃんのお父さん、或いはその意を汲んだ“担当者”から贈られた――どちらにしても由美子さんが特賞を出すように根回しが為されていたというのは想像に難くありません。
――この推理、どうでしょう?
追記。
やまさきもへじの絵が相変わらず変わり過ぎてて……
正直、第1作の頃がいちばん良かったような。
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