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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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汀こるもの『パラダイス・クローズド THANATOS』

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)
汀 こるもの

講談社 2008-01-11
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★★★★☆
大倉を殺した密室殺人、お前らにはあれのトリックがわかるのか!?
周囲の者が次々と殺人や事故に巻き込まれる死神体質の魚マニア・美樹と、それらを処理する探偵体質の弟・真樹。彼ら美少年双子はミステリ作家が所有する孤島の館へ向かうが、案の定、館主密室殺人に遭遇。犯人は館に集った癖のあるミステリ作家たちの中にいるのか、それとも双子の……?


「THANATOS」シリーズ 第1作。
 第37回メフィスト賞を受賞した“汀の如きこるもの”のデビュー作です。
 汀こるものといえば、たまに講談社のHPや『メフィスト』誌面に文章を寄せているのを見るのですが、これがどうにも自分の感覚にぴったり嵌まっていて、一度は読んでみたいと思っていた作家のひとりでした。まぁ発売当初(2年前)に買ってきてずっと積読いてたので、手を出そうと思えばいつでも読めたハズなんですよ。でもそうしなかったことに今は激しく後悔しています。

――いや、これは凄い。面白い。なんで今までこの作品を放置していたんだろ。
 裏表紙の有栖川有栖のなんだか気取っちゃったようなやっちゃった風な(さりとて、読み終わってみれば言い得て妙な)選評をはじめ、方々で言われているようにこの作品のテーマは本格ミステリへの破壊に他なりません。まほろさんが読んだらブチ切れですよ、これ ガクブル(((;゚д゚)))ガクブル
 そんな本格ミステリを愛するすべての人に喧嘩を売った作品にも関わらず、この作品をいちばん楽しめる人というのもやっぱり本格ミステリを愛するすべての人なんじゃないかな、と思います。“ノックスの十戒”や“ヴァン・ダインの二十則”、「まだらの紐」に横溝正史。本格の条件。こちらの求めるものをわかった上でのこの暴虐なのだから、そこはもう最後まで付き合ってやりましょう。

(以下、ネタバレ)


 しかし、この作品は本当に酷い(褒め言葉なんですよ?)
 本格ミステリにおける趣向を凝らしたトリックを仕掛ける犯人というのは、犯罪を露見させないためというのも勿論ありますが、それ以上に自己顕示欲も満載なんですよね。この謎を解いてみろ、という探偵への挑戦というか見下したい症候群というか。自分の構築した謎が解けないで右往左往している状況を見て、心中にやにやしているわけです。ちょうど放火犯が自分の火付けの成果を確認に戻るのと同じような感じでしょうか。とにかく、小説の仕組みとしてもそういうふうにできている(by.さくらももこ)
 それを今回のように「そんなもん知らねーよ、バーカ」で片付けるのは屈辱以外の何ものでもない。小学生に“拳銃で撃たれるごっこ”を仕掛けられた際に「防弾チョッキを着ています」と言って撃たれたフリをしなかった右京さん並みの対応です。あんまりだ!

 ま、それがいちばん相手に堪えるというのだから最善ではありますよね。そして、極めて現実的。
 状況証拠と現行犯でとりあえず押さえておいて、後で警察がじっくり証拠固めはしてくれるから密室の謎なんてどうでも良い――って読者のこっちからしてもそりゃないよ、な展開です。が、しかし。こるものさんの凄いところは実は、その後に明かされる、事件の解決編において無視した密室トリックの真相もかなり質が高いというところなんですよね。充分に本格として戦えるだけのネタを用意しておきながら、敢えて黙殺させた解決編。これが、単なる賑やかしで本格を茶化しただけの作品でないことを十二分に示しています。誰がなんと言おうと、この作品は紛れも無く本格ミステリ。主もなかなか意地が悪いのう。ツンデレ過ぎるぜ、汀こるもの。

 また、散々言われている魚の薀蓄も、薀蓄という言葉が失礼なくらいに立派に生物学講義していたと思います。小学生の頃、図書室で『NHKスペシャル 生命 40億年はるかな旅』の漫画版をを読み漁っていた自分としてはかなり興味深をそそられる話でしたし(それもそのはず、参考文献に『生命』の活字版が入ってるじゃないですか!)、生物の進化をアダムとイブやエデンの園、禁断の果実にオーバーラップさせた解釈の仕方もなかなかに面白い。
 鼻につくというアニメや映画からの引用も、完全にウケ狙いで書かれた西尾維新のそれとは違って(いや、西尾維新はそこがまた面白いのですけど)、適宜適所に引用されるべくしてされた有機的な使われ方をしており、『風の谷のナウシカ』に留まらず『徒然草』や『星の王子さま』、作品のテーマにもなっている『蠅の王』など、幅広く取り入れているためまったく気になりませんでした。むしろ好意的なくらいです。『蠅の王』、読んでみたいな。

 ネックな点を強いて挙げるとするならば、美少年双子というそこはかとなくBL臭のしなくもない設定と、はじめのうちは真樹と美樹がごっちゃになってしまうところですね。もうちょい名前を差別化して欲しかった。
 この双子の関係も単なる共依存というわけではなさそうで、おそらく真樹が美樹を殺そうとしてる?――とにかく、こちらも気になります。そうそう、美樹といえば、読んでいてどうしても『仮面ライダーダブル』のフィリップ(ビギンズナイトVer.)を思い浮かべてしまいます。いや、『ダブル』の方が断然、後なんですけどね。



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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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